【新車】車重を30kg軽量化した日産GT-R NISMO「2020年モデル」はどう進化した?

●進化の極み。GT-R NISMO 2020年モデルは高い次元のトータルバランスを実現

ベルリンにあるDEKRAラウシッツリングサーキットで、Nissan GT-R NISMO 2020年モデルのグローバル試乗会を行った日産自動車。

日産GT-R NISMO 2020年モデルはどんなモンスターマシンに仕上がっているのでしょうか。

トータルバランスを高い次元で実現したという「GT-R NISMO 2020年モデル」。レースで性能が実証された新型ターボチャージャーをはじめ、シフトコントロールの改良、コンポーネントと車両の軽量化、そして新開発のブレーキ、タイヤ&ホイールの採用などにより、超高速での走行安定性をさらに高め、サーキットでの走行性能も大幅に向上させたとしています。

注目ポイントはGT3用ターボを採用した新エンジン。2020年モデルでは、GT-RのGT3レースカーに使用されている新しいターボチャージャーを特別なクリーンルームで匠の手により高精度に手組みされるVR38DETTエンジンが搭載されています。

タービンブレードを従来比で0.3mm薄くしながら、最新の流体解析や応力解析を使って枚数削減による過給圧低下などが起こらないブレード形状が新開発され、枚数を10枚(従来は11枚)にしています。

これにより質量を14.5%、慣性を24%減少。また、背板を新設したことにより、排気ガスがタービンブレードの裏側に流れないよう抑制され、フロー効率を向上したそうです。アクセルを踏み込んだ際の加速レスポンスが全域で約20%向上引き上げられています。

また、心地よいチタン製エキゾーストシステムのサウンドがより強調され、手作りで加工された、青く輝くエキゾーストフィニッシャーがよりスポーティな印象を付与。さらに、6速デュアルクラッチ・トランスミッションも改良されています。アダプティブシフトコントロール(ASC)のアルゴリムを改良することで、Rモードでより積極的、直感的なシフトチェンジを実現。

コーナー進入前のブレーキングで積極的に低いギア段を選択することにより、鋭いコーナー進入(旋回減速時のアンダーステア低減)と鋭いコーナー加速(旋回加速時の駆動力レスポンス向上)を実現したとしています。また、あらゆるシーンで最適なギア段を選択することで、エンジンのパフォーマンスをより楽しめるようになっています。

デザインはどうでしょうか。2020年モデルは、エンジンやブレーキなどの冷却性能を向上させる機能的なデザイン変更を採用しながら、Cd値0.26を変えることなく、高い空力性能を確保。

さらに、フロントフェンダー(-4.5kg)、エンジンフード(-2kg)、ルーフ(-4kg)を新たにカーボンファイバー製にしたことで軽量化を果たしていて、さらに各コンポーネントを軽量化することで計約30kgの軽量化を実現したそう。

とくにカーボンルーフは、平織カーボン素材と低比重材料を組み合わせたPCM(プリプレグ・コンプレッション・モールディング)工法を採用することで、大幅な軽量化を実現し、車体の低重心化に貢献しながらハンドリングとドライビングフィールの向上に寄与。軽量化に加え、炭素構造がより目の詰まった網目となることで、エクステリアの質感向上にも効いています。

ブレーキも強化されています。ブレンボと世界トップレベルの効きとコントロール性を両立した専用カーボンセラミックブレーキを共同開発。世界最大級のフロントφ410 mm(16.1インチ)、リヤφ390 mm(15.3インチ)のカーボンセラミックローターに専用高剛性キャリパーが組み合わされています。

カーボンセラミックローターによりバネ下質量が計16.3kgも軽量化され、新開発キャリパーにはブレーキの大径化に伴い、パッドに対するピストンの配列を最適化した一体型ブリッジ形状を採用。新構造によってブレーキの反応時間が大きく向上し、制動力を正確にコントロールしながらより素早く、効果的に減速できるとのこと。新開発キャリパーは、1000℃を超える超高温下でも変色が起こらない高耐熱の黄色塗装が採用されています。

制動力の向上に合わせて、ブレーキ冷却性能も強化。フロントフェンダープロテクターの形状を改良することで、ブレーキに送られる風量を増加し、ドラッグを増やすことなく、冷却性能を高めています。

足元では、専用のRAYS製20インチ鍛造アルミホイールも注目アイテムで、合計で100g軽量化しながら剛性を高めた新たな9スポーク・デザインを採用。リムにはダイヤモンドカットが施され、白と赤のNISMOロゴも配されています。

タイヤは新開発の新ハイグリップタイプで、サイド部を適正に変形させるようプロファイルが工夫され、トレッドパターンやゴムの押し出し形状を最適化することなどにより、接地面積が11%向上(2017年モデル比)。ハイグリップゴムはナノレベルでの構造解析などが行われ、世界トップレベルのグリップ力(2017年モデル比+7%)を実現したそう。これらにより、コーナリングフォースが5%向上し、より速いコーナリングを可能にしています。

さらに、ビルシュタイン製のDampTronicショックアブソーバーは、車重が全体として30kg軽量化されたことを受け、伸び側(20%ソフトに)と圧側(5%ソフト)の両方をチューニング。これにより、ステアリングレスポンスがよりリニアになり、路面追従性も向上したそうです。

キャビンには、新開発のレカロシートが採用されています。肩甲骨から脇腹、骨盤を安定してホールドし、クルマとドライバーの一体感をより向上。カーボンとコア材の3層構造をシートバック全体に拡大することで、ホールド性がより高められています。さらに、カーボンシェルにコアフレーム構造を追加し、シートバック全体のねじれ剛性が20%向上され、左右計約2.8kg/台の軽量化を果たしています。

GT-R NISMO 2020年モデルのカラーバリエーションは、「バイブラントレッド」「メテオフレークブラックパール」「アルティメイトメタルシルバー」「ブリリアントホワイトパール」で、どのカラーもサイドミラーはブラックになり、他のGT-Rモデルとはひと味違った雰囲気を演出しています。

日本では7月に受注開始予定としていて、発売は10月の予定となっています。

(塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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