三菱らしいハンドリングの良さが光る、2.2Lクリーンディーゼル+8ATの組み合わせ【三菱エクリプス クロス試乗記】

●ディーゼルエンジンでも「三菱らしい」仕上がりのエクリプス クロス

三菱エクリプス クロスは、全長4405×全幅1805×全高1685mmのCセグメント級SUV。クーペフォルムを取り入れながらも十分な広さをもつキャビン(とくにリヤシートの居住性)、そして実用性の高い荷室が魅力。

日本市場では駐車場事情を考えると、惜しむらくは全幅が1800mm以下に収まっていれば……とも感じさせますが、取り回しのいいサイズといえるでしょう。

まず試乗したのは、2019年6月13日に追加された2.2Lクリーンディーゼルエンジン仕様。

割り振られたのは特別仕様車の「BLACK EDITION」で、ピアノブラックのフロントグリルをはじめ、ブラックマイカの電動格納式リモコンドアミラーや前後スキッドプレート、ブラック塗装とブラックマイカ加飾付のサイドステップ、ブラック塗装の18インチアルミホイールによる黒のアクセントカラーがボディを引き締めています。

2.2Lコモンレール式DI-D直噴ディーゼルエンジンは、最高出力145ps/3500rpm・最大トルク380Nm/2000rpm。最高出力150ps/5500rpm・最大トルク240Nm/2000-3500rpmの1.5Lガソリンと比べると5ps譲るものの、最大トルクでは140Nmも上回っています。

同エンジンはビッグマイナーチェンジを受けたデリカD:5にも搭載されていて、スペックも同一。ただし、3列シートミニバンのデリカD:5は車両重量が1930〜1960kgあり、エクリプス クロスのディーゼルエンジン仕様は1660〜1680kgですから、270kg〜280kgもの差があります。

大人約4人分の重量差はかなり大きく、エクリプス クロスを軽々と加速させるディーゼルエンジン仕様は、坂の多い郊外路や国道でも軽くアクセルを踏んでいるだけで、発進からスムーズで力強い加速を披露。

逆に、エクリプス クロスの1.5Lガソリン仕様は1460〜1550kgで、同じ4WDで比べてもディーゼルエンジン仕様の方が130kg重いこともあって、フロントノーズの重さを感じさせます。それは、ガソリンとディーゼルエンジンを乗り比べて実感するフィーリング。

フットワークではガソリン仕様に軍配が上がるものの、ディーゼルエンジンの利点であるトルクを活かした力感のある走りは重厚感にもつながっていて、SUVであるエクリプス クロスにもマッチしているように感じられます。そんなにアクセルを踏み込まなくても楽々と加速させていく様は「ディーゼルいいな!」と思わせる説得力があります。

さらに、ディーゼルエンジン仕様に設定されている8ATも、トルコン付ATらしいリニア感のあるシフトフィールが美点。多様なシフトマップが盛り込まれていて、例えばアクセル急閉操作時には、一時的にシフトアップを抑えることで、エンジンブレーキを掛けやすくし、その後の再加速時をしやすくしています。逆に、アクセルを急に踏み込んだ際には、AT内で演算された擬似的なアクセル開度を使い、キックダウンがしやすくなります。

ほかにも、ブレーキングで減速度が高いと、シフトマップで規定されたダウンシフト点よりも早いタイミングでダウンシフトを行うことで、強めのエンジンブレーキが得られます。

こうした制御により、上り、下り坂が続く郊外路でもメリハリのある走りが可能になっていて、ドライバーは意識せずにスムーズな加減速が得やすいのも2.2Lディーゼルエンジン仕様の利点といえます。

なお、1万6000kmを超えていたガソリン仕様と、おろしたての2.2Lディーゼルエンジンを乗り比べると、足の動きは前者の方がスムーズでした。ただし、両パワートレーンともに、軽快なハンドリング、ライントレース性の高いコーナリングが得られるセッティングという印象で、ロードインフォメーションは比較的伝わりやすく感じられました。

乗り心地がラフというワケではありませんがソフトではなく、走りが楽しめるキャラは、いかにも三菱らしいSUVといえます。

(文/塚田勝弘 写真/中野幸次)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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