●11月(23-24日)に富士スピードウェイでスーパーGTとDTMの交流戦を開催予定
【GTアソシエイション 坂東正明氏・NISMO 坂本昌平氏】
いつもざっくばらんな坂東GTA代表だが、ここでものっけから「昨日、DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)統括団体のトップであるG.ベルガーとTV会議をして、今年11月(23-24日)に富士スピードウェイでの開催を予定しているスーパーGTとDTMの交流戦の具体的な内容を決めました。向こう(ドイツ)からはジャンボ機に14台は積めるので、その台数まで。日本側はGT500クラスに参戦する15台全車が参加。タイヤはDTM側の契約上、ハンコックを使います」と、最新情報を語ってくれた。
続いてNISMOの坂本氏が、2013年以来、日本とドイツの競技団体間で交渉・調整を進めてきて2018年6月にようやく調印に至った「CLASS1」技術規則について、日独共通の主要骨子とそれぞれに異なる細部についての紹介があった。
この二つのシリーズの技術規則を統合する上での難しさ、それはレース形態そのものが異なるところから始まる。日本のスーパーGTは中距離レースでドライバー交替と給油が必須だが、DTMはスプリントレースでドライバー交替も給油もない。これだけで競技車両としての成り立ち、走らせ方はずいぶん異なってくるのだ。DTMの競技条件であれば、乗降用の開口スペースや燃料補給とその時にタンク内から出る空気を抜く経路は、あまりシビアな設計は求められない。それより重視されるのは接触事故も多いのでドライバーのプロテクション。でもスーパーGTではこれら全てを盛り込む必要がある。
すでに2014年から使われ始めている主骨格のモノコックシェルにしても、こうした両者の現場を反映しつつ作られたものだが、やはり色々と問題が現れた。例えばスーパーGTでは性能調整(BoP:Balance of Performance)のためにバラストを積むのだが、それを車両の重心点付近に低く、安全に固定することなども検討が必要だった。
一方ドイツではこれまで4L・V8、自然吸気のエンジンを使ってきたが、2019年シーズンからようやく日本と同じ2L・直4+ターボ過給、直噴に移行する。しかし「 DTMはプレチャンバー不可」と今回言及があった。これまで取材する中で参加3社が具体的に触れたことはなかったが、スーパーGT・GT500では、最近流行のプラグ周辺を副室とした燃焼室が導入されている。それが図らずもここで確認できた。
また参加車両の空力性能を均一化するために、ボディ全周下部からホイールアーチをつなげた「デザインライン」を設定し、そこから上は本来の車体形状を維持しつつ、ダウンフォースの多くを生み出すデザインラインから下の形状や空力付加物は制約条件を規則化した中で形状を工夫することが許されている。ここは毎年のように自由度を減らす規則変更が行われ、車両開発側がそれに対応して知恵を絞り、改良を加えることで、制約強化によって失われたダウンフォースを前のレベルまで回復する、という「折れ線グラフ」的なやり取りが続いていることも紹介された。
こうした規則策定とすり合わせの結果、スーパーGT・GT500とDTMの車両の間では、「EB」と呼ばれる共通部品が52アイテム、車両原価(エンジンを含まず、と思われる)の34%。ちなみにその車両原価はCLASS1規定導入前の「JAF-GT」規定時代と比較して17%削減されているという。
その一方で、スーパーGTはエンジンだけでなく空力面などに開発領域を残し、タイヤやダンパーなどもあえてワンメイクとせずに、自動車メーカーそしてタイヤメーカーが参戦する意義・意味を消さないようにしている。競技&車両規則としては「Class1+α」の内容をあえて選んでいるのである。
「class1」車両規定においては空力性能を均質化すべく、前後バンパー〜ホイールアーチ部をつないだ「デザインライン」から下のボディ形状を一定の形にすることが指定されている。そこに開発の余地を残すかなどでも日独の違いがある。(DTM車両規定2018年版より)
2018年までは自然吸気V型8気筒・4Lエンジン(吸気流量規制)を使って来たDTMも、2019年からは「class1」規定に沿った直列4気筒・2L+ターボ過給、燃料流量の最大値を規制する新エンジンに移行する。日本では2014年に導入されたものだ。燃料流量規制の場合、回転速度を上げるにつれて空燃比は希薄側に移行し、そこでの空気過剰率の設定と燃焼開発が熱効率に直結する。
(両角 岳彦)