ボルボが危険な地点や滑りやすい路面などの情報を「車車間通信」で共有できるシステムを欧州全体で採用

3点式シートベルトの特許を無償公開し、2008年という他社よりも早い段階で新しいボルボ車で死亡・重傷事故ゼロを掲げた「ビジョン2020」など、安全性向上を社是としてきたボルボ。最近では、速度リミッターにより最高速を180km/hに制限すると発表し、話題を集めています。これも安全性向上を目指す一環。

今回、ボルボ車の間で滑りやすい路面や危険な地点を共有し、警告するシステムを欧州全域で導入すると発表したのももちろん安全性向上のためです。

同技術は、ボルボ車同士が互いに通信し合い、クラウドベースのネットワークを介して付近の滑りやすい道路の状況や危険な場所に関してリアルタイムでドライバーに警告するというものです。いわゆる「車車間通信」、「V2V(Vehicle-to-Vehicle)」と呼ばれる技術といえます。

日本には現段階で未導入となる「ハザード・ライト・アラート」と「スリッパリィー・ロード・アラート」が同機能を担い、2016年に初めて、スウェーデンとノルウェーのボルボ90シリーズで導入されています。

来週以降、欧州全域のボルボのドライバーが同機能を利用できるようになり、これらのシステムは、2020年モデルのボルボの新型車すべてに標準装備され、またすでに販売された特定のモデルにも後付けで装備することが可能になります。

ボルボ・カー・セーフティ・センター所長のマリン・エークホルム氏は、「車両同士がリアルタイムにセーフティデータを共有できれば、事故を回避するのに役立ちます。ボルボのオーナーは、他のドライバーの安全に直接貢献していて、前方の潜在的に危険な状況に対して早い段階で警告を受けられます」と語っています。

「ハザード・ライト・アラート」は、行く先にある危険な状況を適切なタイミングで人々に警告し、時間に余裕を持って対処できるようになります。同機能が欧州全域で利用できるようになったことで、ボルボでは他ブランドにも車両同士がブランドの違いを超え、交通安全に関する匿名データを共有するよう繰り返し呼びかけるとしています。

メーカーの垣根を超えて、データをリアルタイムで共有すれば、総合的な交通安全を強力に後押しでき、より多くの自動車がつながるほど、より大きな影響力を得られるようになります。現在では別グループであるボルボ・カーズとボルボ・トラックは、昨年以来、スウェーデンとノルウェーにおいて自車付近の危険な状況をドライバーに警告するためのデータを共有してきました。

同システムを搭載したボルボ車がハザード・ライトを作動させると、ただちにハザード・ライト・アラートが付近でクラウドサービスに接続されているすべてのボルボ車に信号を送り、事故を未然に回避するためにドライバーに警告。これはブラインドコーナーや丘の頂上などの見通しの効かない道路でとくに便利な機能です。

一方、「スリッパリィー・ロード・アラート」は、かなり前方を走行している車両から匿名で路面状況に関する情報を収集し、滑りやすい路面に近づいていることを事前に警告することで、現在の道路状況と前方の道路状況に関するドライバーの意識を高めます。

先述したように、2020年以降、すべてのボルボ車の最高速度が180km/hに制限されます。また2020年代初頭には、ドライバーモニターカメラやその他のセンサーを設置し、ドライバーが明らかに酩酊しているか注意散漫になって死亡や重大な怪我に至る事故の危険を冒すと思われる場合に車両が運転に介入できるようするとしています。

(塚田勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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