【TOYOTA新型RAV4試乗】雪上で乗ってわかったトヨタ新型RAV4がRAV『4』であってRAV『2』ではない魅力とは?

■新型RAV4には世界初の4WDシステム「ダイナミック トルクベクタリングAWD」を採用

・パワーユニットは2種類、AWDシステムは計3タイプを用意

次の冬まで待たずに試乗させてもらったRAV4の進化。『4』に込められた新型の4WDいついてご紹介したい。新型RAV4は3タイプの4WDシステムを用意している。すると「これまでも4WDモデルはあったでしょ?」という声が聞こえてきそう。「いかにも」、だ。しかし今回、既存のガソリン車用AIM(AWD Integrated Management)やハイブリッド車用のE-FOURも進化しているのに加え、世界初採用となる4WDシステム「ダイナミック トルクベクタリングAWD」を新開発し、ガソリン車に搭載し、新型RAV4とともにデビューさせた。

これらの4WDシステムを搭載するプラットフォームは「GA-K」と呼ぶSUV専用のプラットフォーム。これを新設計してこのRAV4から投入を開始。ボディ剛性はフロントサスまわりで40%、ねじり剛性は60%も向上している。RAV4は4WDであっても前輪駆動がベースだし、ハンドルを切って曲がる動作を行うにしてもフロントの足回りがより頼もしく働け、タイヤの接地性も向上するから剛性アップは嬉しい。ねじり剛性も、路面は一般舗装路でも決してまっ平ではなく常に4つのタイヤ各輪には異なるタイミングで大なり小なりズンドコと負荷がかかる。するとそれが足回りからボディへと入力が伝わり、骨格がヤワければ、それが乗り心地や振動、車両の安定性などに影響を及ぼす。SUVは乗用車よりも走行路面のバリエーションも豊富なわけで、ねじり剛性60%ものアップはクルマ全体のしっかり感がこれまでより6割も増したと言ってもいいだろう。

これに組み合わされるパワートレーンは2タイプで、ガソリン車の2.0Lエンジン(171ps/207Nm)+CVTは、エンジンもCVTもトヨタブランドとしては初搭載。CVTはダイレクトシフト=発進用ギヤを追加し、走行中には10速シーケンシャルモードやスポーツモードも選べるという特徴があるけれど、しくみは低燃費を狙った自動無段変速機というタイプ。そしてもう一つが2.5Lエンジンとトヨタのハイブリッドシステム+電気式CVT(こちらは6速シーケンシャルモード付き)だ。

・3種類のAWDシステムの違いは?

では、RAV4の4WD性能はそれぞれどんな印象だったか。最初に申し上げておくと、いまここで4WDをあまりにもフィーチャーしているからと言って、4WDだけが主役のクルマというわけではない。それぞれの4WDシステムがいかに新型RAV4の走りにスムーズな安定感を与え、安心感と楽しさとともに違和感なく「駆動」という縁の下の力になっているかというのがポイントなのだ。

まず、2.0Lガソリンエンジンには2種類の4WDがある。一つが世界初採用の新開発4WDシステム「ダイナミック トルクベクタリングAWD」。特徴は4WDとして前後の駆動力配分ができるだけでなく、さらに後輪の左右タイヤの駆動力配分を別々に制御できること。後輪の左右のタイヤの駆動力=回転速度が変わると良いのは、よりスムーズに旋回性能が向上する。もう一つの特徴が、後輪駆動が不要な場合、前後タイヤの駆動をディスコネクト(切り離して)、2WD(FF)で走行もできる点だ。2WDでも走行性能は十分と車両が判断をすれば、余分な駆動を後輪に強いない分、タイヤを駆動させるためのエネルギー=燃料は不要になるだけでなく、切り離すことで無駄な走行抵抗も低減できる。つまり「ダイナミック トルクベクタリングAWD」の優れた点は、燃費も向上する上、コーナリング性能も上がるいうのだから偉いでしょう?

   

ちょっと細かいことを加筆すると、RAV4が採用するトルクベクタリングは左右のタイヤの回転の速さを制御して旋回をよりスムーズに助けたり、その性能をより向上させる機構。世の中には片側のタイヤのブレーキを摘まんで(状況に応じブレーキシステムの強弱を使って)回転を弱め、反対側の回転速をよりアクティブに活用してコーナリング性能を高めるタイプもある。RAV4に採用されているトルクベクタリングは、純粋に左右どちらかトルクを増やしたい側のタイヤの回転力を高めることでトルク配分を行う。後輪の左右のトルクは100:0までそれぞれ制御可能だという。ちなみに前後のトルク配分はFFにもなるわけで前輪100:後輪0~前輪50:後輪50まで制御できるという。前後のディスコネクトは電磁クラッチを作動させタイヤの動力を利用して行う、世界初のラチェットシフト機構を超小型のユニットで実現させている。

・実感できる「ダイナミック トルクベクタリングAWD」の懐の深さ

雪上では「アドベンチャー」グレードで走行モードを「SNOW」を選び試乗をしたが、タイヤ(ブリヂストンのブリザック 19インチ)のグリップ限界内ではあるものの、直進の安定性はもちろん、3タイプの4WDのなかで最もスマート=クルマの前輪が外に膨らみにくいコーナリングが可能だった。しかも「ECO/NORMAL/SPORT」のモード切替があり、その中でもSPORTが最も積極的にベクタリング制御を発揮するものだから楽しい。楽しいというのはクローズドコースだったからなわけで、一般道では滑りやすい路面でも安定したよりライントレース性の高いコーナリングを可能にする。要はクルマが外に膨らみにくい(アンダーステアになりにくい)のが嬉しい。開発者の方に「その分燃費は下がってしまいますよね?」と質問をすると、「走行シーンによってドライバーが求めるドライビングも変わります。単に安定した走りを保つ4WDモデルというだけでなく、せっかくなら4WDのドライビングも楽しんでほしい」という。雪上という滑りやすい路面での走行性能を安心感とともに得られるだけでない、懐の深さと走りの幅の拡がりをこのシステムのよって実感できた。

ハンドル操作フィールは、雪道である点を差し引いても軽めで、とても操作しやすい。エンジン性能は雪上試乗ということもあり、高回転/高速走行をするチャンスはなかったが、低~中速トルクは十分+αの頼もしさが感じられた。

2.0Lガソリン搭載モデルには「ダイナミック トルクコントロール4WD」というもう一つの4WDシステムがある。こちらも前輪駆動状態と4WD状態を走行状況に応じ、自動的に制御する。同銘柄の17インチタイヤを装着したXグレードで試乗したが、こちらも実は直進安定性を感じつつ、減速→ステアリング操作→コーナリングの一連の動作が実に違和感も不安もなくスムーズだった。

17インチタイヤという最も軽いシューズを履いていたこともあり、ドッシリと4輪が路面を捉える安心感のなかにほどよい軽快感も加わり、このモデルはコレでパッケージは完成している感あり。走行モードを「SNOW+SPORT」にするとハンドルの操舵フィールがより重めに変わり、手応えもダイレクトさが増す分、ステアリング操作に安心感も増す印象だった。つまり、こちらの4WDシステムでも少しの不満も不安もない。より高い走破性と操縦安定性を求め、燃費も両立させたいならトルクベクタリング機構付きを選べばいいということがわかった。

・意外なほど軽快なハイブリッド「E-FOUR」

最後にハイブリッドに採用されるE-FOUR。こちらはプロペラシャフトを持たない電気式4WDシステムを採用し、100:0~20:80の前後駆動トルク配分制御が可能だ。実はこちらも新型から後輪モーターの出力を上げ、より制御性能が向上している。試乗車は同銘柄の18インチタイヤを装着したGグレード。モーターによる発進サポートも賢く、やはり発進の確実でスムーズな印象は雪上でもナンバー1だった。おかげで車重こそ最も重い(+60-70kg程度)ものの、雪の上でもキビキビと走る俊足ぶりに驚かされた。

実は一番最初に試乗したのがハイブリッド車で、この走行性能を確認できた段階で「なぜ雪解けまで待たないのか」という疑問が愚問だと悟った次第。RAV4というSUVのハイブリッドの4WDで雪上路を走ってこれだけコーナリング速度も高く走れるとは想像を超えていた。が、あくまで4WDだからといって、一般道で過信をしないようにお願いします!

最後になってしまうが、世界180か国で販売されるRAV4は、幅広い体型の人が運転しやすいようにAピラー横のミラーの取り付け位置や三角窓にもこだわり、ダッシュボードからの視界の良さを第一にダッシュボードをフラットに設計。また運転席ではサポート性に優れたシートの採用はもちろん、オルガン式アクセルペダルの採用や左足が置きやすいフットレスト、これは前後の角度がより起きているのに加え、左右の傾け角度、さらに助手席のフロア前端も手前に向けて角度が付けられ、足元の安全性と快適性にこだわってデザインされていた。雪上ではあるものの、すべてのモデルの後席も試乗したが乗り心地も良く、広さも十分だったためミニバンに採用するようなリヤ席用のテーブルが欲しいくらいだった。

雪道+4WDに注目した試乗会ではあったけれど、オールシーズンを安全かつ快適に過ごすためにこの実用性にも優れたRAV4を選ぶなら、この先、再びやって来る冬の性能も知っておいて損はない。つまりオンロードでも雪道でも試乗が叶うなら順番はどちらでも良かったのだ。ただ、雪の季節の試乗に間に合ったのは幸いだ。RAV4は2WDも選べるが、4WDは4WDが必要な方だけが選ぶのではなく、積極的に選んでこそRAV4らしい走行性能を得て、楽しむことができる。新型RAV4は、RAV『2』よりRAV『4」がやはり魅力的なクルマに仕上がってたのだ。

(飯田裕子)