【事故データから生まれた腰椎・腹部傷害を評価する新型ダミーは国際大会での活躍も期待される】
2019年3月11日、公益社団法人 自動車技術会を会場に「学生安全技術デザインコンペティション」の日本大会決勝が開催されました。これは国土交通省が主催となっているもので、「ESV国際会議」のプログラムのひとつとして行なわれている学生参加のコンペティションです。
ESV国際会議は自動車の安全に関する国際会議で、各国政府や自動車メーカーなどが参加しているもの。この学生コンペティションでは先進的な安全につながる技術アイデアを競うというものです。
書類審査による選考と予選免除となっている前年最優秀賞校の4チーム(東京都市大学・Team M Lab.、東京大学 チームT、広島市立大学 HIROSHIMA MOMIJI、日本大学工学部バイオメカニクス研究室)が決勝に進出。決勝大会では、それぞれが10分間のプレゼンテーションとスケールモデルデモを行ない、自動車メーカーのエンジニアなどで構成される審査員により最優秀賞が決められます。
最優秀賞の受賞校は、2019年はアイントホーフェンで開催されるEVS国際会議の期間中に開催される国際大会(各国大会を勝ち抜いた代表校で競われる大会)へ派遣されることになります。
参加チームのテーマの次のようなものでした。
東京都市大学・Team M Lab.「自動運転を想定した姿勢時の前面衝突用ダミーの開発および傷害低減手法の考案」
東京大学 チームT「実装に向けた水平可動式シート」
広島市立大学 HIROSHIMA MOMIJI「空気ばねを用いたアクティブ傾斜制御によるゆりかご安全シートの実現」
日本大学工学部バイオメカニクス研究室「自動車乗員の腰椎・腹部傷害評価を可能とする新型ダミーの開発」
それぞれ次世代の安全や快適性が期待できるアイデアで、審査員からは「稀に見る接戦」という声もありましたが、最優秀賞に選ばれたの日本大学工学部バイオメカニクス研究室でした。
アルミとウレタンを使って腰椎を再現するために、ブタの腰椎を利用した実験を行なったり、また実際の事故データを分析をしていたりと、「やるべきことをやった王道」という審査員の評価もありましたが、なによりも新型ダミーの完成度が高いことが評価につながったといえそうです。腰椎や内臓を書いたTシャツを用意して、事故状況を説明したデモも評価されていたようです。
学生安全技術デザインコンペティション国際大会において、これまで日本代表は優勝も、準優勝もしたことがないといいますが、日本代表としての初優勝を期待できそうな「自動車乗員の腰椎・腹部傷害評価を可能とする新型ダミーの開発」というテーマ。日本大学工学部バイオメカニクス研究室の活躍に期待しましょう。
(文・写真 山本晋也)