元F1レーサー井出有治も乗った!ウワサの新型スープラA90にはスープラらしいじゃじゃ馬がいない!【トヨタスープラ プロトタイプ試乗】

■井出有治選手、新型スープラのクオリティの高さに不満足!?

・新型スープラA90は謎だらけ!?

ようやく、というか、もう乗れちゃった!感のある新型スープラA90。「最終仕様ではない」ウンヌンの話もあったり、見慣れた偽装ペイントのままだったり、数値的なものは謎ダラケだったり(教えてくれない部分、多数)、ダッシュボードは目隠しがされた状態だったり……での今回の新型スープラ試乗。でもまぁ、そんな状態でも試乗できるとなるとワクワクするもの。clicccarでは試乗テストドライバーとしてレーシングドライバー:井出有治選手にお願いし、その隠された謎を感じてもらいました。

・「トレッド・ホイールベース・重量配分」から生み出されるこの感覚は初めて!

試乗前の説明で聞いた話から、コーナリングマシンというかレーシングカーを作る上でのコンセプトをだいぶ意識して作り込んだクルマなのかな?というイメージでスープラに乗り込みました。

コースイン後、最初のコーナーでステアリングを切った瞬間に、ショートホイールベース(86より100mm短い)とワイドトレッドのバランスからか、クルマがスーッと入るのを感じました。この感覚は、今までいろいろなクルマに乗ってきたけど一番感じるゾ!っていうのが、まずの第一印象。

重量配分が50:50というのも上記の感覚を生んだ点。普通、フロントヘビーなFRのクルマでコーナーに入っていくと、フロントの重さで流されてアンダーステアになってしまうけど、スープラにはそれが全然なかったです。なんというか、FD3S・RX-7に近い感覚?……ン~FDよりも重心は低いし軽い感じ。それよりもレーシングカートに近いかな? 重量配分50:50の究極な状態がレーシングカート。新型スープラは数あるクルマの中でもカートに一番近い感覚ですね。でもまぁドライ路面で乗ってみないと何とも言えないけど、今日のウェットだとそんな風に感じました。

・86とはコンセプトが全く違う

同じトヨタのスポーティカー「86」と比べると、クルマをコントロールする楽しさ……という部分では共通しているかもしれないけど、新型スープラと86では設計段階からのコンセプトが明らかに違うからね。86は価格の中で最大限できる作り方。その点、新型スープラは作り込みのクオリティの高さというのを感じました。86との違いはソコかな。

目隠しだらけのコクピット……。

■サーキットでも安心感を生むブレーキ+足まわりセッティング

けっこうなウェット路面だったけど、ブレーキもしっかり踏んでみました。ドン!と踏んでノーズダイブしたときでも後ろが軽くなる感じがなくて、凄く安心感もありました。ドライコンディションであっても、このブレーキの安心感はサーキットを走るうえでクルマも安定するでしょうね。

足まわりに関していうと、ノーマルモードだと切った初期でクルマがスーッと動いてくれる。でもサーキットでは動き過ぎかな、街乗りだとそのくらいがいいけど。BMW(※井出選手の愛車はM3)でいったらコンフォートモードって感じ。

スポーツモードは、レスポンスはあるんだけど……、そこから先に関しては今日は路面がウェットなので逆にすっぽ抜けて滑っちゃった!「レーシングカーでドライセットのままウェット走っちゃった」感覚。でも、このしっかり感、レスポンスの良さはドライで走ったら楽しいでしょうね。

ステアリングも自分の操作に対しての反応がいいので「クルマをコントロールする楽しさを味わってもらいたい」というコンセプトに当てはまるし、しっかりその方向性でセッティングしたのかなって感じます。

ボディ剛性に関しては……これもやっぱりドライで乗ってみないとね。ここから先、もうひと押しグッ!ときたときに、ボディ剛性の高さが感じられるから。フワフワとか柔らかすぎるとかは決してないと思うけど、ただそれが十分かどうかはドライで乗ってみないとわからないや。

・フロントは3~4cmクリアランスを低くするべし

なんかさ、全体的に車高が高く感じるよね。でもメーカーからの売り出しの状態であればこんなもんなのかもしれない。それにしてもフロントのクリアランスがあまりにも大きいかな。正面から見ると「何かが……無い?」みたいな。あと3~4cmクリアランスが狭いだけでだいぶかっこよく見えると思うんだけどね~。コンビニの輪留めもフロントから不安感無く行けそうな感じ! でもこれ、気に入ったエアロを付けたりするチューニング部分が、逆に言えば残されているってことなのかも?

全体的なボディデザインだけで言うなら、ボクは悪くないと思う。Z4のデザインをちょっと遊んだ感じで。なにせ職業柄か、路面とのクリアランスが狭ければ狭いほどレーシングカーっぽくてかっこいい!って。

・全体的にまとまり過ぎ? スープラの名に恥じぬ「じゃじゃ馬感」が欲しい!

先代のJZA80スープラ(直6・3L・シーケンシャルツインターボ)と違い、A90は直6・3Lのシングルターボ。エンジンも1600rpmっていう低回転からきちんとトルク感があり、その回転域でもブーストはかかってはいるけど。

低回転域からアクセルを開けた時にちょっともたつくというか。一瞬こう、自分の感覚についてこないブーストのタイムラグがあるんだよね。まぁ今日は、2速使って回転上げてギャンギャン走るというよりは、ちゃんとクルマの動きを見たかったから3速でコーナリングしたりして。そのせいか踏んだ時にちょっとブーストのツキが悪いなって感じ。でも、それもこの路面のせいかもしれないしドライになれば気にならないレベルかも。

それよりも、新型スープラはバランスも良くまとまっているクルマなんだけど、もうちょっとじゃじゃ馬なパワー感でもいいのかな?って思いますねぇ。クオリティがすべて高くていいんだけど、まとまり過ぎちゃっているような気がします。

「スープラ」っていう名前のイメージから、ストレート出てきてドン!と踏んだ時に「おっ!」と驚くのを期待していたんだけど、あぁ~こんな感じなんだ……って。ちょっと拍子抜け? 加速感的にもちょっと物足りない感じ。車体に対してパワーは余裕があるのかな。

もしかしたら、そんなところもこの先、チューニングする余裕を残しているのかも。ちょっとコンピューターチューンするだけでもっと楽しくなると思いますよ。2速立ち上がりでクルマが真っ直ぐになってバン!と踏んだ時に、トラクションコントロールが入っちゃうくらいだったら楽しいよね。Gがかかっていると滑ってグッとトラコンが入るんだけど、単純な転がりだけではそこまでの感じは特になかったし。

アドバイザーとして試乗会に参加した脇坂寿一さんとしばしのエロトーク? いや真剣に新型スープラのナイショ話。

・バランスもクオリティもいいけど、もっと尖った部分が欲しい!

とにかく、こういう「トレッド、ホイールベース、重量配分、低重心」、ここまで好バランスになっているクルマは自分の中で基準がなかったですね。バランスもクオリティも凄くいい。でも逆にちょっとどっかが行き過ぎているようなクセのあるくらいのほうが「スープラ」なんじゃないのかなって。

とにかく今日は……ウエット路面のヤツめ!

【オマケ:ちゃっかり同乗走行したclicccar小林編集長の助手席インプレ!】

いや~やっぱり井出選手、運転上手いわ! 後から聞いた話、コースインして1発目、どのくらいで滑るのか試したら思いのほか滑っちゃったらしいんだけど、それでもオレには「井出選手さすがだな~。初めて乗るクルマの1コーナーめでまぁまぁいっちゃうんだ。でも滑っても余裕あるんだな~。まぁ自分らと頭の中の設定速度の高さが違うんだな~」って。やっぱりF1までいったレーサーって凄いわ!(インプレッションになってませんけど!)

(文:永光 やすの/写真:宮門 秀行)

この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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