【トヨタスープラ プロトタイプ試乗】欧州スポーツカーに迫るクオリティを手に入れ復活するスープラはプレミアムスポーツだった

■新型スープラがサーキットに現れた

・2人乗りで思いの外ドアは小さめ

何度もスクープ写真が報道され、その存在が徐々に明らかになってきているトヨタのスポーツカー、スープラです。今回、偽装された状態のスープラに袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗することが叶いました。

2ドアにしてはさほど大きくないドアを開けて、シートに滑り込みます。かつてのスープラは4人乗りで後席があったため、ドアも大きなものでしたが、新型は2シーターになったため、ドアのサイズも小さいのです。試乗車はエクステリアが偽装されているだけでなく、ドアの内張やダッシュパネル、センターコンソールなども黒い布がかけられ見えないようになっていました。

シートはタップリとしたサイズでありながら、サイドサポートがしっかりと張り出したホールド性のよいものです。右ハンドル車ですが、ウインカーレバーは左側、ワイパーが右となっていました。ガングリップタイプのATセレクターをDに入れ走り出します。路面はウエットなのであまり条件はよくありません。

・3リッターターボエンジン+8ATの組み合わせ

エンジンは3リットルのシングルターボで低速からしっかりとトルクが出るタイプです。1600回転で最大トルクに達するとのことなので、そのフレキシビリティさはかなりのものとなります。ピットロードを出てアクセルを踏み込むと、グッと力強い加速を味わえます。いかにも6気筒エンジンらしいスムーズな特性で、ATをマニュアルモードにすればレブリミットの6500回転まで回しきれます。最高出力はまだ発表されませんでしたが、おそらく350馬力前後ではないかという印象です。

ミッションは8速のATが組み合わされます。多くのATの場合はマニュアルモードで使っても、勝手にシフトアップしてしまうことがありますが、このミッションはそうしたことがありません。また、レッドゾーンに入ってもレブリミッターは働かず、そのまま回ってしまいました。気をつけていないと、回しすぎてしまいそうです。マニュアルモードでのシフトアップ&ダウンはよく制御されていて、ショックは皆無に等しいといっていいでしょう。オートモードでの変速もショックはなく、スムーズなものでした。

路面がウエットだったこともあり、攻め込むような走りはできませんでした。コーナーに向かってステアリングを切り込んでいくと、じつに素直にスッとノーズがインを向きます。ブレーキを残した状態にすればさらにその動きはよくなり、ターンインは素直な印象です。クリップからの加速は力強く、トルク感にあふれています。ショックアブソーバーはレクサスESにも採用された、極低速からダンピングする特性を持つものを使っています。このショックは低速時の乗り心地を生むことが目的ですが、ターンインの素直さにも役立ってる印象です。一世代前のスポーツカーにありがちな、サスペションが硬くて、腕を突っ張ったような足まわりではなく、よく動きながらしっかりとタイヤを効率よく接地させていくタイプの足まわりです。

サーキットのみの試乗なので路面状況はすこぶるいいので、乗り心地については正しい評価はできてないと思いますが、スポーツモデルにしてはかなりいい乗り心地です。なによりも変な振動や動きが一切なく、しっかりとしています。

ご存じの方も多いと思いますが、今回のスープラはBMW Z4と多くの部分で共通パーツが存在します。しかし、その味付けにおいてはトヨタがすべて行ったとのことです。純粋な国産車ではありませんが、欧州スポーツカーに迫る性能を実現したことは大いに歓迎すべき出来事です。このスープラが突破口となり、トヨタのスポーツカーがますます面白くなり、それにけん引されて日本車のスポーツカーが発展していくことに期待が膨らみます。

 

(文・諸星 陽一/写真・宮門 秀行)

この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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