「帝王」ローブ5年ぶりV! タナク&トヨタ勢はパンクに泣く【WRC ラリースペイン・デイ3,4】

10月27日(土)から28日(日)にかけてスペインのスペイン北東部カタルニア地方で開催されるFIA世界ラリー選手権(WRC)第12戦ラリー・スペインのデイ3,4が開催された。

前戦トルコ同様、首位でデイ2を終えたTOYOTA GAZOO Racing WRT(World Rally Team)のタナク/ヤルヴェオヤ組(ヤリスWRC 8号車)。27日(土)からの2日間はターマック路面となる。スペインのターマック・ステージは路面がフラットで、中〜高速のリズミカルなコーナーが続く。

27日:Day3はサロウの北東部を中心に3本のSSを2回走行後、最後にサロウのショートSSを走行する。7本のSSの合計距離は121.80km、リエゾン(移動区間)も含めた1日の総走行距離は465.80kmとなる 。朝から強い雨、トヨタはフルウェットのレインタイヤで挑む。

SS8  サバラ1(Savalla1 舗装路 14.12km)最初のステージ……は安全上の理由でキャンセルされた。

SS9  ケロル1(Querol1 舗装路 21.26km) Day3のオープニングとなったステージを制したのはタナク組。2位はラトバラ組とトヨタ勢で1-2。ラッピ組も7位とトヨタのタイヤ選択が当たった様だ。3番手はダニ・ソルド組(ヒュンダイ・i20クーペWRC)はジワジワと順位を上げ、SS7終了時から総合2位を守る。ラトバラは総合順位を一つ上げ4位に。ローブが5位に後退する。

SS10  モンメル1(El Montmell1 舗装路 24.4km) トップはラトバラ組、2位はラッピ組が続く。3位はヌービル組、4位はオジェ組が続く。タナク組は28位……パンクだ。ラトバラ組から遅れる事1分43秒。総合順位が9位に後退する。総合トップに立ったのはこのSS5位だったソルド組。ラトバラ組はエバンス組(フォード・フィエスタWRC)をかわし、遂に総合2位に返り咲く。ソルド組は0.3秒差だ。

SS11  サバラ2(Savalla2 舗装路 14.12km) ヌービル組がトップ。タナク組が2位。以下ラッピ組、ラトバラ組と続く。ソルド組は9位、ラドバラ組が遂に総合トップに立つ。タナク組はクレイグ・ブリーン組(シトロエン・C3WRC)を抜き総合8位に浮上する。ラトバラ組との差は1分0.4秒。

SS12  ケロル 2(Querol1 舗装路 21.26km ローブ組がステージウイン。ヌービル組だけが0.6秒差で喰い付いたが、3位ラッピ組、ラトバラ組、タナク組と続いたトヨタ勢を5秒以上引き離すスーパータイム。総合順位は3位と変わらないが、14秒離れていたローブ組がラトバラ組迄7.5秒差と迫ってきた。

SS13  モンメル2(El Montmell2 舗装路 24.4km) ヌービル組がトップ、オジェ組が0.9秒差の2位でこの2台が3位以下を5.7秒引き離す。オジェは一気に総合2位に浮上。総合3位ローブ組、4位エバンス組は順位を守っているが、このステージ11位だったソルド組はヌービル組にも抜かれて総合6位に陥落する。

SS14  サロウ(Salou 舗装路 2.24km) タナク組がステージウイン。WRC2のカッレ・ロバンペラ組が2番手に飛び込む。以下、オジェ組、ローブ組、エバンス組、ヌービル組と続く。ラトバラ組は14位。ここはショートSSだが、オジェ組に2.5秒詰められた。

【Day3結果】
順位 No. ドライバー/コドライバー(マシン) タイム Diff
1. 7 ヤリ‐マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ(トヨタ・ヤリスWRC) 2:35:01.8
2. 1 セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア(フォード・フィエスタWRC) 2:35:06.5 +4.7
3. 10 セバスチャン・ローブ/ダニエル・エレナ(シトロエンC3 WRC) 2:35:09.8 +3.3
4. 2 エルフィン・エバンス/ダニエル・バリット(フォード・フィエスタWRC) 2:35:11.6     +1.8
5. 5 ティエリー・ヌービル/ニコラ・ジルソー(ヒュンダイi20クーペWRC) 2:35:14.5     +2.9
6. 6 ダニ・ソルド/カルロス・デル・バリオ (ヒュンダイi20クーペWRC) 2:35:18.3 +3.8
7. 9 エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム(トヨタ・ヤリスWRC) 2:35:48.3  +30.0
8. 8 オット・タナク/マルティン・ヤルベオヤ(トヨタ・ヤリスWRC) 2:36:02.5  +14.2
9. 11 クレイグ・ブリーン/スコット・マーティン(シトロエンC3 WRC) 2:36:39.7  +37.2
10. 4 アンドレアス・ミケルセン/アンデルス・ヤーゲル(ヒュンダイi20クーペWRC) 2:37:09.1  +29.4
11. 3 テーム・スニネン/ミッコ・マルック(フォード・フィエスタWRC) 2:38:16.3  +1:07.2
12. 32 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルッツネン(シュコダ・ファビアR5) 2:41:51.1  +3:34.8※
13. 31 ヤン・コペッキー/パベル・ドレスラー(シュコダ・ファビアR5) 2:42:13.1  +22.0※
15. 49 ペター・ソルベルグ/ベロニカ・エンガン(フォルクスワーゲンポロR5) 2:43:17.7※
17. 50 へニング・ソルベルグ/イルカ・ミノア(シュコダ・ファビアR5) 2:45:24.1※
19. 12 カリド・アル・カシミ/クリス・パターソン(シトロエンC3 WRC) 2:52:54.4
24. 39 勝田貴元/マルコ・サルミネン(フォード・フィエスタR5) 3:02:21.3※
※はRC2クラス車両

28日:Day4は2つのSSを2回走り合計61.70km、リエゾン(移動区間)も含めた1日の総走行距離は245.15kmを走る。最終SS18がエクストラポイントが得られるパワーステージとなる。雨は弱まり、路面は乾いていった。

SS15  ルインデカーネス1(Riudecanyes1 舗装路 16.35km) 再びローブ組がステージウイン。2位のソルド組を6.1秒も引き離し、総合トップに立つ。ラトバラ組は7位で2.6秒差の2位に後退。背後に4位だったオジェ組が0.7秒差に迫る。タナク組は5位でトップとの差を1分0秒9で死守する。

SS16  サンタマリーナ1(Santa Marina1 舗装路 14.5km) ローブ組が連取!SS5位であった総合2位のラトバラ組を7.1秒引き離す。総合3位のオジェ組は6位にとどまり、2位との差が3.7秒に開く。SS2位はタナク組はラッピ組と入れ替わり7位に浮上する。しかし、オジェ組、4位のヌービル組とは50秒の差が有る。

SS17  ルインデカーネス2(Riudecanyes2 舗装路 16.35km) オジェ組がトップ、エバンス組が2位、ソルド組が3位。以下、ヌービル組、ローブ組、タナク組と今回初めてトップ5にトヨタ勢が入らない。ラトバラ組は痛恨のガードレールヒット!タイヤをパンクさせてしまうアクシデントで27位で総合6位に後退。手が届きかけた今シーズン初優勝がこぼれていく。ローブ組もスピンを喫するも首位を守るが、2位オジェは3.6秒に迫る。

SS18  サンタマリーナ2(Santa Marina2 舗装路 (Power Stage) 14.5km) 7番手走行のタナク組は8分2秒5。渾身のトップタイムを叩き出す。次のラトバラ組は前のSSのトラブルが響き41秒遅れる。11番手ヌービル組は5秒7遅れ。12番手オジェ組は2.1秒遅れとなる。13番手のローブ組は8分5秒3!オジェ組はローブ組に対して0.7秒しか詰められなかった。2.9秒差でセバスチャン・ローブが逃げ切った!。2013年に全戦参戦を止めて以来の勝利は通算73勝目を挙げた。

WRC2クラスでは、カッレ・ロバンペラ組シュコダ・ファビアR5)が2勝目を挙げた。ペター・ソルベルグ組(フォルクスワーゲンポロR5)は3位。今シーズン、初のターマックイベントに挑んだ勝田貴元組(フォード・フィエスタR5)はSS6(デイ2)でデイリタイアを喫したが、デイ3より再出走し、クラス12で完走した。

【FinalResult】
順位 No. ドライバー/コドライバー(マシン) タイム Diff
1. 10 セバスチャン・ローブ/ダニエル・エレナ(シトロエンC3 WRC) 3:12:08.0
2. 1 セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア(フォード・フィエスタWRC) 3:12:10.9  +2.9
3. 2 エルフィン・エバンス/ダニエル・バリット(フォード・フィエスタWRC) 3:12:24.5  +13.6
4. 5 ティエリー・ヌービル/ニコラ・ジルソー(ヒュンダイi20クーペWRC) 3:12:25.0  +0.5
5. 6 ダニ・ソルド/カルロス・デル・バリオ (ヒュンダイi20クーペWRC) 3:12:26.6  +1.6
6. 8 オット・タナク/マルティン・ヤルベオヤ(トヨタ・ヤリスWRC) 3:13:11.9  +45.3
7. 9 エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム(トヨタ・ヤリスWRC) 3:13:24.6  +12.7
8. 7 ヤリ‐マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ(トヨタ・ヤリスWRC) 3:13:34.4  +9.8
9. 11 クレイグ・ブリーン/スコット・マーティン(シトロエンC3 WRC) 3:14:15.0  +40.6
10. 4 アンドレアス・ミケルセン/アンデルス・ヤーゲル(ヒュンダイi20クーペWRC)3:14:56.2  +41.2
11. 3 テーム・スニネン/ミッコ・マルック(フォード・フィエスタWRC) 3:16:00.0  +1:03.8
12. 32 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルッツネン(シュコダ・ファビアR5) 3:20:47.6  +4:47.6※
13. 31 ヤン・コペッキー/パベル・ドレスラー(シュコダ・ファビアR5) 3:20:56.1  +8.5※
14. 49 ペター・ソルベルグ/ベロニカ・エンガン(フォルクスワーゲンポロR5) 3:22:24.2  +1:28.1※
17. 50 へニング・ソルベルグ/イルカ・ミノア(シュコダ・ファビアR5) 3:25:35.0※
21. 12 カリド・アル・カシミ/クリス・パターソン(シトロエンC3 WRC) 3:33:36.6
24. 39 勝田貴元/マルコ・サルミネン(フォード・フィエスタR5) 3:42:09.9※
※はRC2クラス車両

チャンピオンシップは今回2位を獲得したオジェ組はパワーステージ2位(18+4)で17pt加算、204ポイント、ティエリー・ヌービルは4位の12ptのみ加算で201ポイントとなり、オジェが第6戦ポルトガル以来奪われたポイントリーダーに返り咲き、6連覇に王手を掛けた。

今回、タナク組は6位+パワーステージ1位(8+5)で13ptを加算し、181ポイント。オジェ組を上回るには24ポイントが必要だが、オジェ組とヌービル組は共にノーポイントとは考えにくく、事実上完全勝利(総合優勝+パワーステージ1位)が最低限の条件で、2台の結果次第となった。

マニュファクチャラーランキングは今回トヨタは6位+7位(8+6 ※)の14ptを加算し、331ポイントとなった。ヒュンダイは4位+5位(12+10)の22pt加算で319ポイント、M‐スポーツフォードは2位+3位(18+15)の33ptを加算し306ポイントとなった。マニュファクチャラーポイントは上位入賞車2台のポイントを加算するため、最大獲得可能ポイント43(1位25pt+2位18pt※パワーポイントは非加算)である。シトロエンはトヨタと115ポイント離れており、タイトル獲得の可能性が無い。M‐スポーツフォードは1-2フィニッシュを果たしても、ヒュンダイ・トヨタの結果次第。ヒュンダイは1-2を決めると他車の順位に関わらず、チャンピオン獲得可能となった。

トヨタは、ヒュンダイが優勝しても1台が2位に入り、もう一台がヒュンダイ・フォードより上位フィニッシュできれば、タイトル獲得となる。

次戦は11月15〜18日に開催されるオーストラリア。ドライバーズ/マニュファクチャラーズのタイトルがかかる2018年シーズン最終戦はオーストラリア東海岸のコフスハーバーを中心に開催され、路面はグラベル。

ドライコンディションの場合、と路面は滑りやすいルーズグラベルに覆われ、出走順の早いドライバーは「砂利掻き役」で不利になる。一方、森林ステージではクルマが巻き上げるダストがなかなか収まらず(視界が遮られ)その場合は先頭スタートのドライバーに有利となる。

泣いても笑っても次の無い最終戦。全車が全力を使い切った戦いを期待したい。

(川崎BASE Photo:GAZOORACING/Jaanus Ree/RedBull Content Pool)