ノートe-POWERが登場したのは2016年の11月、もう2年近くも経ちます。ガソリン車のノートを含め、2017年コンパクトカー販売台数NO.1、2018年上半期登録車販売台数NO.1という、輝かしい成功を収めていいます。
勝因は「e-POWERの成功にある」と日産は発表しており、ホームページでは「なぜe-POWERが選ばれ続けるのか?」と、自問自答をしています。
今回、最新型の「ノートe-POWER Xブラックアロー(2WD)」(車両本体 税込211万4640円)に試乗する機会を得ましたので、元某メーカーのシャシーエンジニアの端くれだった筆者が、リーフNISMOレビューに引き続き、前編後編の二回に分け、忖度せず正直にレビューしていきます。
ノートe-POWERに搭載の1.2Lガソリンエンジン(最高出力79ps・最大トルク10.5kgm)は駆動には直接関与せず、駆動用バッテリーへの充電を行い、モーター(最高出力109ps・最大トルク25.9kgm)を回す役割を担っています。そのため、運転の感覚はEVのリーフと同じです。
試乗したのは2017年のマイナーチェンジで登場した「ブラックアロー」。ルーフ、ドアミラー、アウトサイドドアハンドルがブラック塗装されていて、ダークメタリック塗装の15インチアルミホイールを装着しています。オプションで、リアにこれまたブラック塗装のスポイラーが装着されていてスポーティにまとめられていました。
日産は「ノートe-POWERのキーポイントは、『踏んで驚く』、『緩めて驚く』、『離して驚く』という3度の驚きである」と説明していますが、試乗を終えた筆者は「なるほど、いかにもその通りだ」と思いました。この後、筆者が感じたクルマとしての良い点、あと一歩の点を挙げていきます。
【良い点①】素晴らしい出来のe-POWER Drive
e-POWERの「ワンペダルドライビング」は、センターコンソールのプッシュボタンでSモードにすることで可能になります。
「ワンペダルドライビング」はアクセルペダルを踏む量によってクルマの加速度を調節し、アクセルペダルを戻すことで減速度を決める、シンプルで分かりやすい操作です。
アクセルペダルを完全にオフにすれば、停止直前で「すっ」とブレーキを抜く「上級者」のブレーキ制御をしてくれます。自分で制動(位置)をコントロールする方が、かえってギクシャクしてしまうかもしれません。
普通のガソリン車と比べるとアクセルペダルの一踏み目から「新感覚」を感じます。もちろん、通常のガソリン車の様にクリープ現象が使えるDモード、ECOモードもありますので、運転に戸惑う心配もありません。
【良い点②】操舵が一発でスパっと決まる!ステアリング修正の少なさ
意外にも良く感じたのが、コーナリングシーンでの「きびきび」したハンドリングでした。
ノートはコンパクトなボディですが、少し高めの全高、e-POWERシステムとバッテリー搭載による車重アップ、そしてこのクラスでは標準的な185/65R16タイヤ(ブリヂストン製)のスペックから落ち着いたハンドリングを想像していましたが、一般道の中低速コーナーでの応答性はいい意味で予想を越え、操舵が一発でスパっと決まる、気持ちの良い応答を示してくれました。
そのため、コーナリング中に操舵角を探る様な「ステアリングの修正」も少なく、きびきびしているが落ち着いた、安心感のあるハンドリングでした。筆者は少し誤解をしていたようです。
【良い点③】クルーズコントロール使用時の直進感の良さ
もう一つ、「これは良い!」と感じたのがインテリジェントクルーズコントロールです。
日産にはProPILOTという優秀な制御がすでにありますが、このノートには前車追従システムとインテリジェント LI(車線逸脱防止システム)まで搭載されています。この塩梅がまさに丁度良かったのです。
ハイウェイでステアリング上のスイッチをオンにすれば、クルマが自動的に流れに乗って走ってくれます。渋滞などで完全停止してしまったり、また、ブレーキに触れると即座にキャンセルされますが、再セットも容易にできます。
ステアリングへの車線キープアシストはありませんが、ProPILOTの特性である絶えず左右に「ちょろちょろ」修正されるステアリング制御に筆者は信頼がおけないため、ステアリング操作を自らコントロールするこのノートの方が、筆者は「ちょうどよい」と感じました。
またノートのシャシー性能自体の直進性が良いため、実に快適にハイウェイを走行することができました。インテリジェント エマージェンシーブレーキや踏み間違い衝突防止アシストを試す機会はありませんでしたが、「付いている安心感」は頼もしいものです。
前編では、筆者がよく感じた点を挙げていきました。ここまで完璧に思えるノートe-POWERにあった弱点は、後編でお伝えします。
(文/写真:吉川賢一)