── 3本のビードはジュラルミンのスーツケースがモチーフだそうですが、道具感の表現が目的ですか?
「それもありますけど、ドアパネルの強度を確保するため、ビードの上下の面にそれぞれピークを持たせ、断面を「3」の字にしています。また、スーツケース同様ビードは凸面の方が傷が付きにくい。当初は全幅が厳しく凹面だったのですが、ピークを工夫して凸面に変更しました」
── 今回は仕事以外の使い方も提案していますが、であれば「+STYLE」シリーズはもっと各々の特徴を持たせた方がよかったのでは?
「COOLなど、当初はもっと派手にしていました。ただ、このクルマを使うユーザーさんには押しつけのカタチはNGなんです。自分で手を加えるのはアリですが、変に「用意」した途端振り向いてくれなくなる。このあたりは非常にシビアで微妙なんです」
── インテリアですが、オーディオや空調、シフトパネルなどがポンポンと別個に配置されているように見えるのは意図的ですか?
「そうです! インテリアはフラットな壁に「棚」を配する非常にシンプルなコンセプトなんです。その棚にそれぞれのパーツを置いていくイメージで、あえて一体化は避けています」
── 最後に。今回は徹底的なリサーチを元にしてブレがありませんが、かつてのシビックやビートなど、ホンダの名車はどれも表現にブレがありませんでした。今回は、あくまでも商用車だからこその明快さだったのでしょうか?
「それもありますが、それこそNやT360から、ホンダのクルマは伝統的にパッケージングから造形をつくってきた。だから、パッケージが的確な企画はヒット車につながるとも言えますね。N-VANが各方面からホンダらしいと言われるのも、それが理由なのかもしれないですね」
── セダンやスポーツカー、あるいは商用車など、徹底したコンセプトワークはどの車種でも必要ということですね。本日はありがとうございました。
【語る人】
株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター デザイン室 1スタジオ
主任研究員 山口真生(写真左)
研究員 加藤千明(写真右)
(インタビュー・すぎもと たかよし)