【メルセデス・ベンツ Gクラス試乗】爪を隠したグリズリーは高級感の塊。圧倒的なクロスカントリー性能を堪能 

「新型」となったGクラス。まずはクローズドコースでの試乗です。試乗コースとして用意されたのは、山梨県の富士ヶ嶺オフロード。

ここではモデルチェンジ前のモデルと新型を乗り比べました。とにかく素晴らしいのが、どちらも普通のタイヤが装着されているにもかかわらず、本格的なオフロードコースを難なくこなしていく点。とくに新型はオフロードでありながら、全体的な乗り味に高級感があり、また同時にちょっとした滑り出しなどに安心感を伴うところがやはりホンモノ感にあふれています。

今回のオフロード試乗ではデフはセンターとリヤのみをロックしました。Gクラスのデフは電子制御でロック可能です。ダッシュボードに取り付けられた、1、2、3のスイッチを押すとセンター、リヤ、フロントの順番でデフがロックしていきます。

クロスカントリー走行に慣れた人なら、センター、リヤ、フロントの順番でデフロックを掛けていくのがセオリーだとわかるでしょうが、そうで無い人にとってはデフロックに数字が付いているのはわかりやすくていいでしょう。そのスイッチの配置が左から3、1、2となっているうえにイラストにはデフ位置が表示されているので、「ああ、そういうことなんだ、その順番がいいのね」と知ることもできます。

最近のSUVでもモノコックのボディを使い、軽めの車体となっているクルマが多いですが、Gクラスはがっちりとしたラダーフレームを使うクルマで、車重は2.5トンを超えます。標準タイプのG550は422馬力のエンジンを搭載し、このボディを引っ張ります。力不足を感じることは一切ありません、またブレーキについても不満はありません。

AMG G63はエンジンが585馬力となるのでさらに力強い走りが可能です。今回は高速道路の試乗を行っていませんが、背の高いフルタイム4WDとしては直進安定性も非常に高いレベルにあると言えます。

コーナリングに関しては乗用車系のクルマとは異なるイメージで臨まないとなりませんが、先代とくらべるとかなり乗車ライクなコーナリングになってきました。車高がある割にはロール量は抑え気味で、グイッと曲がっていきます。車高が高いクルマのロール量を抑えると、足が突っ張ったような走りになるものですが、そこをうまくバランスさせているところはさすが、という感じがします。

もっとも標準タイプのG550で1562万円、AMG G63は2035万円という価格設定ですから、それくらいのことはきっちりやってもらわないと困る、とも思うのであります。

オンでもオフでもつねに主張するのはその高級感です。がっしりした乗り味は大きな角材で組み上げた家具のような雰囲気を感じます。こればかりは、今世の中に存在しているクルマでまねができるものはなく、唯一無二の存在とも言えるものでしょう。

(文:諸星陽一・写真:冨士井明史)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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