【ホンダ・S660 モデューロX試乗】コンプリートカーならではの完成度の高さ。悪条件下でも安定した走りを披露

試乗時は箱根をベースに行われましたが、当日は雨が強く、また霧も発生するという最悪の条件でしたが、逆にこのような悪条件でありながらもミッドシップのS660が何の不安感もなくドライビングできることにびっくりです。ノーマルのS660もミッドシップモデルとしてはかなり高い安定感を備えているモデルですが、モデューロXの安定感はかなり上をいくものです。

安定感が高いといってもアンダーステア指向を強めているわけではなく、ステアリングを切ったなりに曲がっていくニュートラルステアを極めた印象です。微少舵角に対しても敏感にクルマが反応し、機敏な動きを示すモデューロXですが、コーナーに向かってステアリングを切っていくとスッと向きを変えながら暴れることなくクリッピングに向かいます。敏感さと安定感を合わせ持つのは軽自動車っぽくない印象です。

ショックアブソーバーは3段目に合わせてあったのですが、乗った際の硬さはとくにありませんでした。もっとも柔らかい状態にセットされたモデルも少し乗ったのですが、そちらは動きに不安定さがありまとまった感じがありません。乗り心地という面はやはり柔らかいほうがいいのですが、クルマの動きに正確さがなくなり気を遣う場面もあり、柔らかいからといってコンフォートさが増える訳ではありませんでした。

試乗時のセットがもっともよく、正確なハンドリングを披露してくれました。ただ、何もせずにヒュンヒュン走ってしまうので、面白みには少し欠ける感じです。運転を楽しむなら、少し硬めにしてピーキーにしたほうがいいかもしれません。ただし、ミッドシップの挙動は唐突なので、ドライビングには注意が必要です。

ノーマルのS660を買って、このセットをオプションで組もうとするとパーツ代+工賃で110万円をオーバーするといいますが、コンプリートカーの場合は+66万4000円の価格設定となっています。コンプリートカーのメリットはなんと言ってもコストパフォーマンスの良さです。+66万4000円を超える価値は十分に感じられました。

(文:諸星陽一・写真:冨士井明史)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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