実際に行われたデモンストレーションでは、様々な動きを見る事ができました。
宅配便のドライバーは、例えばマンションの玄関先で荷下ろしをした後、車外からタブレット操作で近くの駐車場にクルマを移動させておくことができるため、重量物や複数の荷物のデリバリーなど時間のかかる作業を問題なく行う事が可能です。
また、近隣地域など徒歩での配達が効率的なケースでも、同じようにクルマを適切な駐車スペースで待機させておいたり、または配達人の後ろについて来させたりすることもできます。
さらに、「イノベーション・バン」はZFの電動ドライブを装着した電気自動車なため、排ガス問題によって海外で増えているエンジン付き車両の進入が禁止されているエリアや、早朝および深夜の住宅街などでも問題なく活躍できそうです。
カメラ、レーダー、ライダーなどのセンサー類とAI、および統合ブレーキコントロールや電動パワーステアリングなどのアクチュエーターを搭載して自動運転を実現している「イノベーション・バン」には通信機能も備えられています。
クラウドには、積み荷の配達先や希望配達時間、品質保持期限などの情報がインプットされており、車載システムは、そうした荷物に関する情報と実際の交通状況などから最適な配送ルートをリアルタイムで計算し「Mixed Realityゴーグル」を通じてドライバーに伝える事で、最も効率の良い配達を実現します。
私たち消費者にとっては、宅配便の受け取りが今よりも便利になりそうです。
アプリを利用すれば、自分の荷物が今どこにあるかをピンポイントで把握したり、直前に配達場所を変更したりできます。急に外出する用事ができた時にはお隣さんに受け取りをお願いして配達場所を変更したり、残業で帰宅時間が遅れる場合には配達時間を変更したりといった事がスマホなどで手軽にできます。
同時に宅配便ドライバーの待ち時間や再配達の手間が省けるため、業務の効率化が進みコスト低減にもつながるかも知れません。
安全、効率、自動運転という「メガトレンド」に乗って急速な進化の時代にあるクルマ。私たちが普段利用する乗用車では、その安全性、快適性と利便性の向上を日常生活でも実感する機会が増えてきました。
一方、あまり身近に感じる事のない商用車ですが、こちらも大きな進化の過程にあり、物流業界だけでなく私たちの日常生活もより便利なものにしてくれるポテンシャルがある事も良く分かりました。
(Toru ISHIKAWA)