今回試乗したモデルはA200とA250、ともにガソリンモデルとなりますが、搭載エンジンは異なります。A250は従来からのメルセデス製2L・4気筒を更にリファイン、そしてパワーアップしたかたちで224psを発揮、同時に7速DCTとの組み合わせで141g/kmの低燃費を実現します。ゴルフでいえばGTIに相当するFF系Aクラスのパフォーマンスリーダーです。
そしてA200の側にはメルセデスが業務提携関係にあるルノー日産と共同開発した新設計の1.3L・4気筒を搭載。最高出力は163psと、先代の1.6L・4気筒より11ps上乗せされています。メルセデスの4気筒モデルとしては初となる気筒休止システムを採用し、ガソリンエンジンながらGPF=パティキュレートフィルターを搭載するなど、先々の環境基準にも対応するスペックを備えたこのユニットは、ドイツ国内にあるメルセデスのプラントで組み立てられます。
Sクラスと同等バージョンのADAS機能を搭載するなど、新型Aクラスのトピックは電装関係に至るまで枚挙に暇がありませんが、中でも特筆すべきトピックはMBUXの採用でしょう。これはいってみればグーグルやアマゾンが提供するAIスピーカーのサービスを車載化したようなもので、「ヘイメルセデス!」という掛け声と共に訊ねたいことや頼みたいことをいえば、クラウド経由でメルセデス独自生成のAIが応えてくれるというもの。ナビの目的地設定などはもちろん、たとえばちょっと暑いというだけでエアコンの設定温度を1度下げてくれたり、音楽かけてといえばライブラリーから時間や天候などの要素を判断しておすすめの音源を引っ張り出してくれたりするものです。
更にMBUXはWeb上のユーザーサービスであるメルセデスミーコネクトと紐付けられているので、使い込むほどにユーザーの思考や嗜好を熟知したAIを、メルセデスミーコネクトを介して別の車両でも使用することが可能です。
それについてメルセデスの言及はありませんが、クルマの買い替えの際に再びメルセデスを選べば、恐らく自分に馴染んで友達のような感覚を抱くようになったAIを移行できるという、ある種の囲い込み的な効果も彼らは考えているのではと思います。つまりMBUXは今後メルセデスの大半のモデルに搭載されることになる、そしてユーザー層が最も若くデジタルとの親和性が高い客筋のAクラスに初搭載したと。推測とはいえ、そこからはメルセデスのしたたかさも透けてみえます。ちなみに日本仕様はこのMBUXの日本語化に時間を要していることもあり、今年末〜来年前半の導入が予定されている模様です。
走りにおいて特徴的なのは、快適性の向上でしょう。先代Aクラスはセグメントにおいても高レベルなダイナミクスを実現する一方で乗り心地が粗い、言い換えればスポーティ側に寄り過ぎている感がありました。モデルライフ中は段階的にそれを緩和してきたのですが、新型ではまず遮音を大きく見直し空力特性も徹底的に詰めた結果、静粛性が大幅に向上しています。これはベンチマークたるゴルフのみならず、自社銘柄でいえばCクラスをも上回ってしまうのではというほどの勢いです。