【幼少時代の英ちゃん】
生まれも育ちも奈良県の山奥。周りは山に囲まれ、自宅から徒歩10分くらいのところに吉野川が流れる。3人兄弟の末っ子。性格は気弱で人見知りが激しい。が、正義感は人一倍強い。スポーツ万能で、特に山で鍛えた足腰は強じん。そのおかげで、運動会ではいつもトップ。中学はサッカー部に入部。初めからレギュラー入りし活躍する。勉強は苦手。
普通、1年はボール拾いと声援と相場が決まっている。それに奈良はサッカーや野球が盛んなところで、レベルは高い。1年でレギュラー入りした英ちゃんが羨ましい。
しかし、サッカーは1年でピリオド。このまま続けていてもプロになるわけでもない。かといって勉強でどれだけやれるか分からない。これから先、みんなと同じパターンの生活が面白くないし、いい加減に生きているように思えてきたという。
その頃、兄がセリカに乗っていてクルマに多少、興味があった。近くに鈴鹿サーキットはあるし、ひょんなきっかけから見に行こうと決心。次の朝4時に起き、始発電車でサーキットまで足を運ぶ。ちょうどF2の開催日だった。
【レーサーに目覚める日】
「凄いなぁ、と思ったと同時に自分はこれだ! これしかないと思いまして。とにかく感激しました。苦しいかもしれないがレースをやれるものなら本気で、しかも死ぬ気で自分のすべてをかけてやろうと決心しました。中途半端な気持ちではやりたくなかった。高校へ行かなかったのも、その分、家の仕事(運送業)を手伝い、お金を貯めてました。実際、お金が無いとレースはやれませんからね」。
その後、18歳になるとすぐ免許を取得。が、クルマを買える余裕はなく、兄の乗っていたセリカをお古でもらう。そして1ヵ月後、コツコツ貯めていたお金でオスカーFJ1600を新車で購入。当時、150万円也。すぐ鈴鹿サーキットを走る。