【SUPER GT2018】予選Q2初進出からの決勝タイヤトラブル。それでも粘って完走へ持ち込んだ鈴鹿戦のNSX GT3

そんなサプライズを経てグリッドに並んだModulo KENWOOD NSX GT3。鈴鹿サーキットのシステム故障により40分ほど予定がずれ込んでしまったスケジュールですが、いざマシンがグリッドに並ぶとそんな遅延も吹き飛ぶ華やかさに包まれます。

そして当初予定から40分遅れの15時20分、三重県警の白バイやパトカーが先導するパレードランから始まった決勝レース。ポールポジションの96号車 K-tunes RC F GT3は勢いよくスタートを切っていきます。富士500kmレースでは絶妙なスタートを切って攻めまくったModulo KENWOOD NSX GT3ですが、ここ鈴鹿では緩やかなスタートとなり、むしろバトルを避けるかのような穏やかなレース運びを行っていきます。

順調にレースが進んでいくかのごとく思われた鈴鹿の300kmレースですが、GT500クラスの13周目にGT500クラスのマシンがクラッシュ!コース上にクルマを停めてしまいます。このアクシデントの処理ためにセイフティーカー(SC)が導入されます。

セオリーでいけばSC解除のタイミングでピットインをしてやればタイムロスを極力避けることが出来るのですが、いかんせんまだ13周目。SUPER GTには一人のドライバーがレース距離の3分の2を越えて運転してはいけないというルールがあるために、ここでピットインをしてももう一度ドライバー交代のためにピットインを余儀なくされるということで、全チームはピットインを避けてきます。Modulo KENWOOD NSX GT3もここでのピットインを避け、レースを続ける選択をしました。

SC解除となるタイミングのGT500での19周目。早めにピットインをするチームはこのタイミングでピットに入っていきます。しかしModulo KENWOOD NSX GT3がピットインしたのはGT300での28周目。

ライバルに比べて燃費の良くないといわれるNSX GT3では満タンで鈴鹿を200kmを走行することはできないといわれ、早めにピットインをして給油をしてしまうと最後の最後でガス欠の恐れがあるという予測の元に、確実な安全圏内まで粘りに粘ってのピットインを余儀なくされたのです。

4位まで順位を上げてのピットイン。ドライバーは道上選手から大津選手にスイッチ、給油が終わるとすぐさまピットロードから走り去って行きます。あれ?タイヤ交換は?そう、Modulo KENWOOD NSX GT3はタイヤ無交換で給油時間が長めになってしまうというロスを最小限にする、という作戦をとったのです。

序盤の道上選手の決して攻めたペースではないレース運びは、このタイヤ無交換作戦のためにタイヤをいたわりながらの走行をしていたためだったのです。タイヤもガソリンも充分に持ちこたえられるという読みから、ここからは大津選手が富士で見せたような攻めたレースが期待されます。

しかし、大津選手が飛び出してから2左リアタイヤに異変が発生し思うようなタイムが出ません。そして34周目に再びピットイン。リアタイヤを交換して再び戦列へと戻っていきます。

タイヤ無交換作戦は失敗だったのでしょうか?鄭永熏監督にお話をうかがうと「タイヤのトレッド面の中央からイン側が剥離して、中にあったワイヤーが解けながらリアサスペンションに巻きついていた」とのこと。原因はタイヤメーカーであるヨコハマタイヤと分析してみないとわからないとしながらも、「何かを踏んでしまったためにトラブルになったのではないか?」とのことでした。

剥離していない部分を見ればタイヤの磨耗は走行には充分なレベルにあったということで、無交換作戦自体は間違いではなかったようです。

2回のピットインを余儀なくされ、大きく順位を落としてしまったModulo KENWOOD NSX GT3ですが、チームはあきらめるということは無く、大津選手にとってはレース中の自己ベストも更新するなど、果敢に攻めの走りを見せていきます。そのおかげもあり、完走を果たした上でチームポイントも獲得できたのです。まさに粘り強さ!

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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