7000rpm以下で250km/hをマークするように
すべてをセッティングしたのが成功のポイント
ノーマルエンジンでの谷田部テストで、同じエンジンを持つレビンよりも遅い181.36km/hという結果しかマークすることができなかった我がMR2は、シグマオートモーティブのチューニングにより1回めで236.84km/h、そして早くも2回めのトライで目標値の250km/hをオーバーしてしまった。
パワーもノーマルの約100%アップという260psを発生している。しかし、スペシャルパーツを多用することなくマークさせた数値だけに、各パーツの疲労限界点ではないかという判断のうえで、最終トライ前に完全に分解チェックをしてみた。
しかし、現時点でレントゲン等によるチェックは不可能で、分解されたパーツはそれぞれ製造元などの専門分野で細かく分析され、消耗度や傷み具合をチェックすることになっている。例えばピストンは西ドイツ(※1984年当時)カールシュミット社に送られ電気的に疲労度を測定する、といった具合だ。
そこで今回は、バラバラになった状態でチューニング主管担当・シグマオートモーティブの時実氏による目視検査によるチェックをしてもらった。
【ピストン】
エンジンをバラし始めてすぐに思ったことは、想像以上にダメージが少ないことだ。エンジンの中で一番激しい動きをするピストンはシグマ製だが、縦キズなど1本も入っておらず、ピストンリングが入る溝のショルダー部にもダメージはまったく見受けられなかった。これは、シリンダーに対するピストンの熱による収縮率がピッタリ計算通りであったことを意味している。300psをオーバーするとなるとどうなるか分からないが、それ以下ならセッティング上のミスをしない限り十分いける。
【コンロッド】
コンロッドはまったくのノーマル。もちろん、ここにも何らストレスの跡は見られない。コンロッドのトラブルに多いねじれや千切れは、回転数に対するバランスによって起きることで、今回のように7000rpmまでならノーマルで何ら問題ないという診断だ。
【クランクシャフト】
クランクはノーマルをバランス取りしただけ。しかしこのクランクには、コンロッドのビッグエンド側のメタルが1本につき2枚で、4本で8枚、クランクそのものをブロックで支持するところに計10枚、合計すると18枚ものメタルが干渉している。1枚1枚メタルを見ると、中にはオイルに混じった遺物による回転方向のキズがついたものもあったが、ストレスによるダメージ、つまり焼き付きは兆候すら現われていなかった。これもやはり、絶対回転数が7000rpm以下と低いからで、例えば同じ250psを発生するエンジンでも、回転数が7000rpmと9000rpmとでは、ストレスは50%以上も違いがあるということだ。
【カムシャフト】
メタル類でただ一ヵ所ダメージがあったのは、カムをホールドしたメタルだ。これはカムプーリーに近い側が最も酷使されることになる。これはカムが常にコックドベルトによって引っ張られながら回されるからだが、今回の場合、メタル/カム共に回転方向に向けての細いキズが何本か入っていた。しかし、カムシャフトはクランクの回転数に対して1/2しか回転しないので、特別気にするほどのものではない、という時実氏の診断だ。
【ターボ】
タービンは1回、2回ともに同じK26を使用した。しかし、排気側のハウジングは1回めが14番だったが、2回めは13Bターボに使用する16番と大きなものに変更した。交換するにあたり低速時のトルク不足が心配されたが、4500rpmからブースト1.2kg/cm2も得られ、4500rpm、150ps以上、トルク25kgmが出ていたので問題なしと判断。
ウエイストゲートは2回ともレース用のタイプE、バルブの径が通常の50%もアップしたものだ。タービン、ハウジング、ウエイストゲートとも目視チェックでは全く問題は発生していなかった。
このように、各部から決定的なダメージはもちろん、不安が残る部分すら発見されなかったのは、ひとえに回転数にあるといえる。エンジンパワーとファイナルのマッチングがベストであり、マキシマム回転が7000rpm以下で抑えられたので、何ら問題が発生しなかったと結論を出した。
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この点検のため、エンジンルームがドンガラになったOPT・MR2。次回は新エンジン投入でMR2の、4A-Gの限界トライを試みるようです。それは、また次の機会に!
[OPTION 1984年12月号より]
(Play Back The OPTION by 永光やすの)
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