何かと面倒な車いすの乗降を飛躍的に省力化させたワンタッチ固定装置仕様【進化する福祉車両・ウェルキャブ】

ウェルキャブといえば、車いす仕様車も外せません。車いすのまま乗車し移動ができる車いす仕様車は便利なモビリティ。今回、その便利さが飛躍的に向上するシステムが登場しました。

それが、ワンタッチ固定装置仕様のノア・ヴォクシー・エスクァイア車いす仕様車タイプⅢ。従来型では、車高を下げてリアゲートを開けて…と、1分30秒はかかっていた作業が、15秒ほどで終わります。

乗り込むまでの作業を挙げて、ざっとその違いを見てみましょう。

【従来型】
・リアの車高を下げる
・リアゲートを開け、スロープを出す
・車内に入り、車いす引き上げ用のセーフティベルトを後部へ
・車いすユーザーは車両後方に移動
・セーフティベルトを車いすのキャスター上部に掛ける
・車いすを車内に乗り入れる
・車内の車いす用の車輪止めで停止し、固縛
・車いすのブレーキをかける
・車いすの後ろにしゃがみ、固定装置のフックを車いす後部フレームの左右2ヶ所に掛け、固縛
・車いす用シートベルトの腰用ベルトを装着
・車いす用シートベルトの肩用ベルトを装着
・スロープを上げ、リアゲートを閉じる
・リアの車高を上げる

実はこれらの作業にプラスして電動で作業するものにはロックスイッチの解除などの動作も入ります。

それでは、ワンタッチ固定装置仕様の乗車プロセスを追ってみましょう。

【ワンタッチ固定装置仕様】
・リアの車高を下げる
・リアゲートを開け、スロープを出す
・車いすを車内に乗り入れる
・前後輪の間にあるバーをロックに固定
・車いすのブレーキをかける
・3点式のシートベルトを装着
・スロープを上げ、リアゲートを閉じる
・リアの車高を上げる

どうでしょうか。これなら、はじめて車いすの乗降を手伝うとしても、やりきれそうな気がしませんか。

さらに、このシステムは、乗り込むための動線がシンプルになるのもメリットです。従来型では、車いすを引き上げるために介添者が一度車内に入り、セーフティベルトを車外まで引っ張りだす作業がありました。そして、車いすを押して乗り込んだ後に、しゃがんで固定フックを車いすにかける作業もありました。

つまり、なにかと細かく車内外で、行ったり来たりしゃがんだりという動作があったのです。その一連の動作が、車両の中に押して入ってロックにはめるだけに簡略化されています。

このシステムは介添者だけでなく、車いす使用者が車外で待たされる時間が減ることにもなり、雨天時の屋外では大きなメリットになります。

ポイントとなるのは、車いすワンタッチ固定装置。車いす側にも固定するためのバーが必要なため、現在は対応した車いすとセットでの販売となっています。


トヨタでは、ワンタッチ固定のためのシステムや、車いす側に必要なバーなどの仕様を公開し、他社でも同様の取り付けができるよう規格化していきたいということでした。

このワンタッチ固定装置、もし規格化されて、鉄道やバスなどの公共交通機関でも設置されるようになれば、車いすの固定が簡単になり、より一層モビリティの可能性を広げるものにもなりそうです。

古川教夫

【関連記事】

4人に1人が高齢者という高齢化社会。クルマができるコトを突き詰めて考えた【進化する福祉車両・ウェルキャブ】
https://clicccar.com/2017/11/12/522227/

狭い場所でも雨の日でも乗り降りをラクに。サイドリフトアップチルトシート車【進化する福祉車両・ウェルキャブ】
https://clicccar.com/2017/11/12/526879/

介護施設への送迎や地域主体の公共交通などに最適化した「ウェルジョイン」【進化する福祉車両・ウェルキャブ】
https://clicccar.com/2017/11/12/526881/

この記事の著者

古川教夫 近影

古川教夫

1972年4月23日生。千葉県出身。茨城大学理学部地球科学科卒。幼稚園の大きな積み木でジープを作って乗っていた車好き。幌ジムニーで野外調査、九州の噴火の火山灰を房総で探して卒論を書き大学卒業。
ネカフェ店長兼サーバー管理業を経て、WEB担当として編プロ入社。車関連部署に移籍し、RX-7やレガシィ、ハイエース・キャピングカーなどの車種別専門誌を約20年担当。家族の介護をきっかけに起業。福祉車輌取扱士の資格を取得。現在は自動車メディアで編集・執筆のほか、WEBサイトのアンカー業務を生業とする。
続きを見る
閉じる