電気自動車(EV)の最大の課題は、充電に時間がかかるという点です。
現在、発売されているEVでは急速充電器を使っても80%まで充電するのに30分かかります。休日の高速道路のパーキングエリアにある急速充電器に電池切れを恐れたEVが並んでいることも珍しくありません。1台のEVが80%まで充電するのに30分もかかるのですから、EVが増加すると、充電に時間がかかるという問題は深刻です。
この問題を解決できるリチウムイオン電池の一種である次世代次世代二次電池SCiB(登録商標)を、東芝が試作に成功したと発表しました。東芝は現在発売している現行SCiBの負極材に使われている黒鉛をチタンニオブ系酸化物に替えることで、超急速充電とエネルギー密度の向上を実現したということです。
東芝によると、このたび開発した次世代SCiBを EVに搭載すると、6分間の超急速充電で、従来のリチウムイオン電池を搭載したコンパクトEVと比較して走行距離を3倍の320km(32kWh電池容量搭載のコンパクトEVを想定したJC08モードでの走行距離換算)に延ばすことが可能だということです。
今回、東芝が試作したのは111mm×194mm×14.5mmの大きさで容量は50Ah。EV用の電池で負極材として新採用したチタンニオブ系酸化物は、超急速充電や低温充電でも電池の劣化や短絡の原因となる金属リチウムの析出が無く耐久性と安全性に優れており、結晶配列の乱れが少ないという長所もあります。
結晶構造中にリチウムイオンを効率的に供給することができ、現行SCiBの特徴である高い安全性と急速充電特性を維持しながら、負極容量(単位体積当たりの容量)を黒鉛に比べ2倍に増加させることが可能になりました。
また、次世代SCiBは現行SCiBのよりも優れた長寿命・耐低温特性を備えており、試作した電池を用いた実証では、充放電を5000回繰り返しても90%以上の電池容量を維持できること、およびマイナス10℃の低温環境下における10分間の超急速充電を確認したということです。
東芝では、開発中の次世代SCiBを2019年度には製品化することを目指しており、2〜3年後には6分という短時間でガソリン車のガソリン補給のように短時間で充電できるEVが登場する可能性があります。
(山内 博・画像:東芝)