NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)と名古屋大学ナショナルコンポジットセンター(NCC)は、熱可塑性樹脂と炭素繊維を混練するLFT-D工法を用いることで、熱可塑性CFRP(炭素繊維強化プラスチック)のみによる自動車用シャシーの製作に世界で初めて成功したと発表しました。
今回の熱可塑性CFRP製自動車用シャシー製作の成功で、材料供給から最終製品にいたる一貫自動生産の技術が確立され、軽量化と量産化を実現しながらコストを低減することが可能になったということです。
これまでも軽量化のためにシャシーのような構造部材に熱硬化性CFPRを採用することは行われていましたが、力学的特性は優れているものの、成形性・融着性に問題があるため航空機や一部の高級車にしか適用できませんでした。
そこでNEDO事業(革新的新構造材料等研究開発事業)に参加した名古屋大学の石川 隆司(いしかわ たかし)特任教授らのチームは、成形性・融着性に優れ、温度を上げていくと柔らかくなって融解する特性を持った熱可塑性CFRPを使って、LFT-D(Long Fiber Thermoplastics?Direct)工法を用いた開発に取り組んできました。
その結果、熱可塑性樹脂を超音波振動と加圧力によって溶融させ、部材同士を接合する超音波融着法を用いたシャシー組み立て技術を確立し、熱可塑性CFRPによる自動車のシャシー部材の成形をこれまでより圧倒的に短い、1分程度の短時間で完了させることに世界で初めて成功しました。
しかも、LFT-D工法(ドイツのフラウンホーファ研究機構で最初に着想された繊維強化プラスチックの製造方法)では、連続的に炭素繊維を供給して熱可塑性樹脂ペレットと混練し、比較的長い炭素繊維長を保ったまま混練機から押し出される素材を高圧プレスに供給。短時間に所望の構造部材を成形することができます。
このため、圧力釜を使用するオートクレーブ法(航空機の製造で採用)では必要となる中間工程が今回の方法では不要になり、熱可塑性樹脂と炭素繊維の供給から最終製品までの一貫自動生産システムを構築して、製造時間の短縮が実現しました。同時に熱可塑性CFRPの融着可能な利点を生かして、ロボットを活用した超音波融着システムでシャシー部材を接合し、オール熱可塑性CFRP製シャシーの製作に成功しました。
ボディ外板だけではなく、シャシーもCFPR化することで車体の軽量化が大幅に進展し、今後自動車の車体の大部分がプラスチック化される素材革命の時代が来ることも予想されます。なお、オール熱可塑性CFRPシャシーは、2017年10月24日から幕張メッセで開催される「IPF Japan 2017 (国際プラスチックフェア)【第9回】」での展示が予定されています。
(山内 博・画像:NEDO)