日産で無資格者が実施していた「完成車検査」とは、どんな検査? 何が問題なの?

ところで、完成車検査とはどのタイミングで実施され、何を検査しているのでしょうか?

生産工場においては、様々な工程の途中で品質管理のための検査やチェックが行なわれています。そして、完成車検査というのは前述の通り、国土交通省との約束に基づいた検査。生産工程がすべて終了した後に、独立した検査とし実施されるものなのです。

その目的は、国土交通省に申請・届出した通りに生産されているかどうかを確認すること。

いわゆる「型式指定制度」は、現車による基準適合性審査と品質管理(均一性)の審査の結果、指定された型式の自動車について、新規検査時の現車提示が省略される制度です。本来であれば一台ずつ車検場で検査する必要があるわけですが、同一車種が大量生産される乗用車においては、申請したのと同じ仕様となっていることをメーカーが検査すれば、保安基準を満たしていると認める制度なのです。

ですから、検査内容としてはサイドスリップや光軸調整、スピードメーターの精度やブレーキ性能といった車検でチェックされる項目において、申請した数値になっているか、保安基準を満たしているかを確認。最近では自動ブレーキに関する検査も行なわれています。そして、激しいシャワーを浴びせて雨漏りがないかなどをチェックするわけです。

こうした検査においてパスできなかったクルマは、修正が必要となります。現段階で、検査に不合格だった個体を出荷していたという話にはなっていませんし、日産自動車の西川廣人(さいかわ ひろと)社長も、検査自体は行なわれているという認識を持っているようです。

もちろん、正規の検査員以外が実施した検査の精度がどこまで信頼できるのかは疑問もあるでしょうし、そもそも非正規の検査員が関わった段階で、国土交通省の認める完成車検査としてはNGなのは間違いない事実。少なくとも121万台において、国土交通省との約束を破ったといのが現実です。

仮に製品としての不具合がなく、ユーザーにおいて直接的な被害がなかったとしても、これは「自動車の型式認証制度」への信頼性を揺るがす大事件なのです。

(山本晋也)

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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