室屋選手が今季3勝目!ワールドチャンピオンに希望をつなぐ【レッドブルエアレース2017】

決勝日は晴天で、周囲の風車がほとんど動かない絶好のコンディションの中、競技がスタートしました。

【ラウンド・オブ・14】

このラウンド、予選上位選手の選手がほぼ勝利を手中にしました。唯一の波乱は予選6位、地元のマティアス・ドルダラー選手がパイロンヒットのペナルティーを犯し、ファン・ベラルデ選手に敗退。昨年の王者は今回も何か噛み合っておらず、一昨年までのドルダラー選手に戻ったかに見えます。ファステストルーザーはミカ・ブラジョー選手が勝ち上がる事に。

イワノフ vs ソンカ○
ブラジョー vs チャンブリス○
○ベラルデ vs ドルダラー
ル・ボット vs 室屋○
○マクロード vs グーリアン
○コプシュテイン vs ポドルンシェク
○ホール vs ボルトン

室屋選手は、フランソワ・ル・ボット選手と対戦し、52.048で勝利。実は室屋選手はこの時タイムを意図的に落としています。それはラウンド・オブ・8でランキング上位の選手と直接対決するため。ランキング上位選手と対戦を行い、直接相手のポイントを削らないとタイトル獲得の可能性が下がってしまうからです。

決勝のラウンド・オブ・14で直接対決を狙って予選の順位を下げても、上位の選手が後から飛ぶため、意図的にタイムを調整されて対戦を回避されてしまいます。ファイナル4で対戦しても相手のポイントを大量に削ることはできません。つまり、狙って上位と対戦し、相手を失点させられる機会はラウンド・オブ・8だけ。そして、作戦通り対戦相手はランキング3位のチャンブリス選手となりました。

【ラウンド・オブ・8】

今シーズンのランキング1〜5位の選手が勝ち残り、ここで敗退した選手はポイントに差を付けられてしまう過酷な対戦となりました。

・ホール vs ブラジョー

予選・決勝は最速のホール選手と最速の敗者ブラジョー選手の対決は、0.002秒という数センチの僅差でホール選手が勝利。しかし、ノーペナルティの飛行で51.731のタイムはファイナル4に不安を残しました。

・室屋 vs チャンブリス

チャンブリス選手との直接対決。先攻の室屋選手は50.772、後攻チャンブリス選手は51.398。室屋選手はファイナル4の進出を決めるとともに、ライバルのポイント積み上げ阻止にも成功しました。

・ベラルデ vs コプシュテイン

コプシュテイン選手、最初のハイGターンで痛恨のオーバーGで失格。ランキング5位に位置し、わずかに残っていたタイトル挑戦権がここで砕け散りました。ベラルデ選手は安全に飛行し52.216。今シーズン2度目のファイナル4に進出しました。

・マクロード vs ソンカ

ランキング2位と1位の直接対決。マクロード選手はラウンド・オブ・14では先攻グーリアン選手が4秒ペナルティを受けたにもかかわらず、序盤のゲート3でペナルティ(インコレクトレベル:+2秒)を受け、辛うじて勝ち上がっており、ここ数戦のキレの良い飛行がやや影を潜める50.898。対するソンカ選手は終始無駄のないラインをトレースして50.596。首位対決はソンカ選手が制しました。

【ファイナル4】

決勝のファイナル4は、ラウンド・オブ・8を勝ち抜けた(ホール、室屋、ベラルデ、ソンカ)順に飛行します。

最初に飛行したホール選手は50.846と本日初めて50秒台のタイムを刻み、優勝の可能性を残します。続いて飛行した室屋選手は199.1ノットと絶妙のスタートを決めると、抜群のスラロームとバーティカルターンをタイトに決め、50.451の本日のファステストタイムを叩き出し、トップに立ちます。

3番手のベラルデ選手はゲート11でのペナルティ(インコレクトレベル:+2秒)を受け、53.680。室屋選手は2位以上が確定しました。最後に飛行したソンカ選手は199.9ノットと素晴らしいスタートを切りますが、計測ポイントで一度も室屋選手を上回れず、50.964のタイムはホール選手にも遅れを取ってしまいます。

これにより、室屋選手の今シーズン3勝目、通算4勝目が確定しました。

この優勝で、室屋選手はマクロード/チャンブリス両選手をポイントで再逆転し、ランキング2位に返り咲きました。

トップのソンカ選手とのポイント差は4ポイント。次戦、室屋選手は優勝してもソンカ選手が3位以下でなくてはタイトルには届きません。しかし、絶望的だったポイント差を6ポイントも縮め、タイトル争いは実質的にソンカ・室屋の2選手に絞られたといえます(可能性ではマクロード、チャンブリス選手を含め4人)。

2017シーズンの最終戦は10/14,15のインディアナポリス。マルティン・ソンカと「サムライ」室屋義秀の最後の戦いが見逃せません。

(川崎BASE・Photo:Predrag Vuckovic/Andreas Schaad/Daniel Grund/Predrag Vuckovic/Sebastian Marko/Samo Vidic/Red Bull Content Pool)