BMWのデザインアイコン・キドニーグリルを初採用したモデルとは?【意外と知らないクルマメーカーの歴史・BMW編】

BMWが販売するクルマといえば、入門車の「1シリーズ」から最上級の「7シリーズ」まで、例外なく備わっているアイコンがあります。それが「キドニーグリル」の愛称でお馴染みのフロントグリルです。

まさにBMWをBMWたらしめている象徴ですが、現在の好評を得るまでの道のりは決して楽ではなかったそうです。

このグリルが初めて採用されたのが、1933〜1934年に生産された「303」でした。ボディサイズは全長:3900mm×全幅:1440mm×全高:1550、ホイールベースは2400mmと、現代では非常にコンパクト。ですが、1932年から製造していたモデル「3/20」から大幅にサイズアップしており、当時のBMWのラインナップでは最大級のサイズでした。

また、同車はキドニーグリルだけでなく、直列6気筒エンジンの搭載も初めてのモデルでもあります。「M78」の型式を冠するこのエンジンは「3/20」が搭載していた4気筒エンジンからの発展系であり、ボアを若干拡大して排気量は788ccから1182ccへアップ。最高出力は22kW、最大トルクは68Nmを誇ったそうです。

その後、「303」をベースに、「M78」を小型化させた直4エンジンを搭載する「309」のほか、排気量を増やした「315」が誕生。「315」は「319」「329」「320」「321」と順調に発展していきました。

ところが、第二次世界大戦で事態は一変。自動車の製造はストップし、「321」も1941年に製造を中断。1945年に終戦を迎えたものの、戦前ほどの規模での製造は難しく、デザインも戦前のものを使わざるをえなかったそうです。こうして再び「321」は生産は再開され、1950年まで製造されました。

その後、「340」などの新モデルを絶え間なく発表。とりわけ、1962年に発売された「1500」は欧州および米国市場で高い人気を獲得。その理念をそのままに、より小型化しスポーティなテイストを強めたのが「マルニ」の愛称でお馴染みの「1600-2」であり、日本での販売の中核を担う「3シリーズ」のルーツとなったモデルです。

キドニーグリルは、今も昔も人目を引くアイコンですが、それと同時にBMWの歩んできた歴史の重みを感じさせてくれる証でもあるのです。

(今 総一郎)