スバルの最新「ぶつからないクルマ」は本当にぶつからないの?

日本の自動車安全の概念を変えたといっても過言ではない「スバル」の「アイサイト」。

それまでも自動車の先進安全技術は自動車事故ゼロ、自動車事故での死亡者ゼロを目指して自動車メーカーは取り組んでいますが、永らく「安全はお金にならない」と揶揄されるほど、大事なものだということは重々承知でいながらも、今ひとつ日の当たらない存在でした。

それが一躍、注目される存在に変えたのは、スバルの「ぶつからないクルマ」というキャッチコピーを掲げた「アイサイト」のCM。

あの言葉のインパクトは最強で、しかもイメージしやすい。しかし、言葉だけを鵜呑みにしてしまうと、自動ブレーキ=ブレーキを踏まなくても勝手にクルマが止まる、という誤解を与えてしまうという危うさを抱えています。あくまでブレーキ制御とはいえ、衝突被害軽減や衝突回避のための「運転支援システム」ということは忘れてはなりません。

そんなアイサイトもどんどん進化していき、最新アイサイトは「レヴォーグ」と「WRX S4」に搭載された「アイサイト・ツーリングアシスト」。

実は少し前にテストコースでは体験試乗はしていましたが、渋滞でこそその真価が分かる部分もあるため、正直いまひとつイメージが掴めませんでしたが、今回は公道試乗。しかも渋滞の体験ができる首都高がメインコース。

今回、私が試乗したのは新型「レヴォーグ」。高速道路上では120㎞/h以下ならば全車速追従クルーズコントロールが作動し、ハンドル、アクセル、ブレーキをアシストします。認識の状態は先行車のみを認識、車線を認識しつつ先行車も認識、車線のみを認識する3つのパターンでメーター内のマルチインフォメーションディスプレイに表示されます。つまり、車線と先行車の両方をカメラで見て、制御されているのです。

とはいえ、気になるのは実際に首都高を走ってどうかということだと思いますが、コーナーでは思うより頻繁にアシスト解除はされます。だいたい200Rが目安ではあるようですが、速さとコーナーのRの大きさのバランスというかGのかかり具合が関係するようなので一概には言えないようです。小さなコーナーが多い首都高は少し苦手なのかも。

また、首都高は本線に合流までのアプローチが短く、合流する車両が結構な勢いで飛び込まねばならないということもありますが、今回、芝公園から首都高へ合流した後で、追い越し車線から走行車線を走っている私の前に入ろうと加速してきたトラックがいました。しかし私の前はちょうど空いたときで、システムは読めなかったのか、クルマが加速してしまうというシーンが。

もちろんブレーキを踏んでシステムを解除したので問題はありませんでしたが、私のように「こういう場合は危険かも」と予測して準備していたならともかく、不意にそうなった場合はこれはっちょっと怖いかも。隣に乗っていた担当者の方も、「こういう部分はまだちょっと弱いんです」と言っていたので、今後の課題のひとつかもしれません。

しかし完全停止した後も、3秒以内ならば自動発進し、再発進させるにはハンドル内にあるスイッチを押すか、あるいはアクセルを踏むことで再発進が可能。しかも破線の認識はかなり高いし、道路の継ぎ目などでも穏やかな入力で、あまり音や振動が気にならないほど静かさアップ。スタアリングの右側にあるスイッチ操作も、初めて使った人でも触っているうちに慣れてくる簡単な操作なのは嬉しい。

まだ「100%ぶつからないクルマ」ではありませんが、また一歩、進化したのは確か。

2020年にはアイサイトはさらに進化し、ステレオカメラにミニマムなデバイスを入れて自動車線変更機能などを実現するとのことです。

吉田 由美