クルマに関わる本、モノ、カタログ収集60年! 隠れ家『俥亭』訪問

三栄書房で「すべてシリーズ」の使い勝手担当もされていた元モーターファン別冊編集部の木村浩さん。
以前より戦前からの膨大な自動車カタログや自動車関連書物を収集しているとは聞いていました。木村さんは8年ほど前に三栄書房を退職。「集めた資料を展示する場所を作りたい」とお話されていましたが、この度、私設文庫「俥亭(くるまてい)」をオープンされたということで、早速行ってきました。

場所は埼玉県某所。
「俥亭」の名前の由来は、鉄の塊の自動車に人肌のぬくもりを与えたいという願いを込めたもの。

自動車カタログや自動車関連の書物の一部は、タクシー会社を経営していた木村さんの祖父から自動車メーカー勤務だったお父様に引き継がれ、そこに木村さん自身が収集したものが加えられたとのこと。
カタログなどは別の場所に保管されているとのことですが、私が行った「俥亭」には数万冊(ご本人曰く「数えるのもおぞましいぐらい」とのこと)もの自動車関連の、書物やミニカー、そのほか「自動車」にまつわるいろいろなモノが保管されています。

まずは書物。戦前のものから現在のものまで自動車専門書はもちろん、歴史もの、自動車がらみのエッセイ、旅行記、絵本、児童書、写真集、映画ソフト、レコードなどなど。しかもタイトルや写真などにクルマの写真が使われていたりするようなものまでの幅広さ。

ちなみに木村さんのクルマ好き、クルマ関連グッズ収集は2歳の時に連れて行ってもらった1954年の第一回全日本自動車ショウのオフィシャ ルブックからスタート。ちなみに会場のブース紹介で「プリンス自動車」がなんと 「プリン自動車」に化けてしまいました。

日本国内で360万部が販売されたという大ベストセラー「日米会話手帳」。

1943年に発刊されたという自動車文庫書「自動車と汽車」(隈部一雄著)には、「自動車の正しい座り方」が描かれ、最も危ない座り方にはお婆さんが正座してシートに座っている絵が描かれています。

日本初の自動車専門書は「日本自動車工業史稿」によると大正4年の「ガソリン発動機自動車」とのこと。

そして木村さんは私のために「近代女性と自動車」や「女性と自動車」という雑誌なども用意してくださいましたが、これはファッション誌のようなもので、バッグや流行ファッションなどが描かれています。

また、昔のオリジナルの自動車カタログなどからも、当時の流行しているファッションがうかがえます。

「トヨペット・スーパー」のカタログには2種類のボディデザインが紹介されてい て、「RHN」の「N」は「中日本重工」製、「RHK」の「K」は「関東自動車工業」製と それぞれ異なるボディをトヨタは発注していました。お客さんの住むエリアによって は、どちらのデザインが納車されるのか確証がなかったなんて驚いてしまいますね。

ちなみに自動車業界関係でいえば「LESSON」(五木寛之著)は、男性モータージャーナリストと年上女性との官能的なお話とのことですが、さて、この話のモデルはいるのでしょうか?(笑)

ここに保管されているミニカーは約1万点。その中で、木村さんの一番のお気に入りはトミヤマ(その後のトミー、現在のタカラトミー)製の「いすゞ梯子消防車」のプラモデ ル。

しかし私的には、木村さんのお父様が木村さんが子供の頃に手作りしてくれたというオンリーワンの木製角材のロードローラーがイチオシ。

もちろん「すべてシリーズ」は創刊からすべて保管されていますが、中には私の唯一の単行本「安全&安心!やさしいクルマ運転術」(吉田由美著)も私のサイン入りでありました!

ある意味、これもお宝です。もう絶版のはずなので。

さて、この「俥亭」。コレクション要素も高いのですが、1つの場所で見たい人、何かについて調べたい人だけでなく、使い方もいろいろ。ただ、木村さんが60年かけて集めた宝物たちなので、誰にでも解放というわけにはいかないようですが、現在は運営に向かって準備中とのことです。

吉田 由美