マイルド・ハイブリッド車両向けに改良した48Vリチウムイオン電池パックを日立オートモティブシステムズが新開発

日立オートモティブシステムズは、従来より性能が向上したマイルド・ハイブリッド車両向け48Vリチウムイオン電池パックを新開発しました。今後、自動車メーカーへのサンプル供給を開始し、2019年度から量産を開始する予定です。

近年、欧州では48Vマイルドハイブリッドが規格化され、比較的安価で燃費を改善できる技術として、48Vリチウムイオン電池によるマイルド・ハイブリッドシステムが急速に普及すると見込まれています。

日立オートモティブシステムズではこうした動向に対応して、2016年3月にマイルド・ハイブリッド車両向け48Vリチウムイオン電池パックを開発していました。今回発表した新開発品はこれを改良して、出力密度が従来比1.25倍、エネルギー密度が従来比1.5倍に向上しています。

リチウムイオン電池の出力密度を溜める手段として、これまでは電極の膜厚を薄くして抵抗を減らす方法が一般的でした。しかし、この方法では出力密度が高まる代わりに、蓄えられるエネルギーが減ってしまうという課題がありました。

そこで、新開発のリチウムイオン電池パックでは、セルの電極の構造をミクロンレベルで改良し、リチウムイオンが流れやすい構造にすることで、電極を薄くしなくても抵抗を低減、出力密度を高めることに成功しました。

さらに正極・負極それぞれの材料組成を改良し、単位重量あたりに蓄えられるリチウム量を増加させることでエネルギー密度を高めています。

これらの工夫で、従来比1.25倍の出力密度と、従来比1.5倍のエネルギー密度を同時に実現することができました。また、セルの内部抵抗を抑え、発熱量を低減し、リチウムイオン電池パックの筐体に熱伝導性や放熱性の高い金属を採用したことで、冷却用ファンが不要な自然冷却が可能になり、薄型化と静粛性の向上も実現させています。

出力密度の向上で最大出力は12kW以上に増加し、モーターの加速アシストにおけるトルク性能を強化、発進時の加速力が向上しています。また、最大入力も15kW以上に増加し、急減速時の大きな回生エネルギーも回収し、エネルギー損失も低減することができます。

スズキが国内で販売しているマイルドハイブリッド車の場合、駆動用バッテリーには12Vのリチウムイオン電池を使用しており、今回の48Vリチウムイオン電池パックは主に欧州車用に輸出されるのが大半になると見られています。

(山内 博・画像:日立オートモティブシステムズ)