ボルボ最上級セダン&ワゴンのRデザインは走りで選ぶ【VOLVO S90,V90 R-Design試乗】

乗り心地にはリヤサスペンションが大きく影響しますが、このS90、V90はリーフスプリング、いわゆる板バネを使っています。一般的にリーフスプリングというとトラックなどに使われているもので、乗り心地は悪いという印象ですが、S90、V90はまるで異なります。トラックなどはクルマの前後方向にリーフスプリングを配置しますが、S90、V90はクルマの横方向にリーフスプリングを配置します。左右のサスペンションアームをリーフスプリングで連結しているので、リーフスプリング自体がスタビライザー効果を生みます。

またトラックでは鉄製のリーフスプリングを数枚を重ねて使いますが、S90、V90では複合素材のリーフスプリングを1枚で使っています。この方式がそもそも乗り心地をよくしています。30cmの定規(できれば金属製)の両端を持って曲げてみてください。最初は柔らかく簡単に曲がりますが、曲げる量が増えると硬くなかなか曲がらなくなります。リーフスプリングも同じ特性で、最初は柔らかく次第に硬くなります。これが乗り心地とコーナリング性能を両立できる秘密です。数枚を重ねとスプリング同士がこすれ合い、大きな荷重に耐えますが、特性は安定しません。S90、V90では複合素材の1枚ものとすることで、理想的なバネ定数とその変位を確保しているわけです。

S90、V90に積まれる320馬力のツインチャージドエンジンは、アクセルを踏み込んですぐに高いトルクを発生。非常に力強い加速を披露します。8速のギヤボックスもパドルシフトによって、クイックにシフトチェンジも可能です。シャシー、パワートレインともにスポーティな味付けはセダン、ワゴンのボディタイプを感じさせないものです。

S90は749万円、V90は769万円。同じエンジンを積むインスクリプションよりもS90で93万円、V90で30万円リーズナブルな価格設定となっています。もちろん装備が異なるからですが、装備よりも走り……という方はRデザインを選ぶという、賢明な方法もあります。
(諸星陽一)

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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