メルセデス・ベンツ Sクラス オープンカーに採用された熱可塑性コンポジットシート製のモジュールラックとは?

ドイツの特殊化学品メーカー・ランクセス(LANXESS)グループのボンドラミネーツ社(本社:ドイツ・ブリーロン)は、同社が開発した連続繊維で強化された樹脂製の熱可塑性コンポジットシートが、メルセデス・ベンツ Sクラス オープンカーのモジュールラックに採用された、と発表しました。

モジュールラックとは、電子制御用のコントローラーや電子部品を搭載する板状の部品のことで、今回のメルセデス・ベンツ Sクラス オープンカーの場合は、ほぼ 0.5×0.5メートルのサイズでトランクの下に設置されており、従来のアルミ製の場合と比較して50%の軽量化を達成していることが最大の効果です。

また、モジュールラックを連続繊維で強化された半仕上げ熱可塑性コンポジットシートで形成することで、大型構造部品を薄肉化する設計が可能になり、軽量化だけでなく、電子制御関係の複数の機能を、ひとつのモジュールラック上に統合することもできます。

今回のメルセデス・ベンツ Sクラス オープンカーに採用されたモジュールラックでは、厚さがわずか1ミリの薄いモジュールラック上に、多くのコントローラが搭載されています。このモジュールラックの樹脂素材には、ボンドラミネーツ社の「テペックス(登録商標)ダイナライト(Tepex dynalite)102-RG600(2)/47%」が採用され、数々の効果をもたらしています。

ランクセスのキーアカウントマネジャーを勤めるユリアン・ハスペル氏は、「結果として、これまで使用されていたアルミニウムと比較すると、コンポーネントが約50%軽量化でき、この低重量と統合された機能によって組み立てが容易となり、一層のコスト効果に繋がります」と、新しいモジュールラックの効果を強調しています。

ボンドラミネーツ社がメルセデス・ベンツ Sクラス オープンカー向けのモジュールラック用に開発した「テペックス」では、連続繊維で強化された半仕上げポリアミド6コンポジット(樹脂材料)をハイブリッド成形プロセスで加工していることも特徴のひとつです。

このハイブリッド成形プロセスの利点は、射出成形と同様に、例えば、ネジボス、クリップ、強化リブやガイドエレメントなどをコンポーネントに一体成形することができる点です。

ランクセスの構造コンポーネントの専門家であるグレゴール・エフェス氏は、「クリップはネジ接続を削減し組立を容易にします。それは、クリップの組込みによって、通常コントローラを搭載するためのネジ接合部が不要となるからです」と、ハイブリッド成形プロセスのコスト低減効果をアピールしています。

今回のモジュールラックは、メルセデス・ベンツとパートナー数社によって共同開発されました。ランクセスは、このコンポーネントの機械的デザインを設計しました。モジュールラックのメーカーであるPoeppelmann Kunststofftechnik GmbH & Co. KG社は、機能統合、全自動のワンショットハイブリッド成形プロセス、部品評価などコンポーネントのエンジニアリング部門を担当し、樹脂成型用の金型はGeorg Kaufmann Formenbau AG社が製造しました。

ランクセスでは、現在、類似のコンポジットデザインを採用した大型のモジュールラックを、他のシステムサプライヤーや自動車メーカーと共に開発しており、同種のモジュールラックの採用が、今後、他の自動車メーカーにも広がることが予想されます。

(山内 博・画像:ランクセス)