バブル景気は軽自動車の常識を破るスポーツカーを生み出しました。
1991年5月にホンダ・ビートというミッドシップのオープン2シーターがデビュー、同年11月にはFRオープンのスズキ・カプチーノが登場。翌1992年10月にマツダからオートザムAZ-1というミッドシップ・ガルウイングのマイクロスポーツカーが誕生しています。
この3台をイニシャルでまとめて「ABCトリオ」などと呼ぶこともありますが、じつはトリオではなく、ある意味でカルテットでした。
それは、スズキから「CARA(キャラ)」というミッドシップ2シーターが生まれていたから。カプチーノに続く、2つ目の「C」です。
1993年に誕生したスズキ・キャラはオートザムAZ-1のOEM。そもそもマツダのオリジナルシャシーによるAZ-1でしたが、エンジンはスズキの3気筒ツインカムターボでした(カプチーノやアルトワークスと基本的に同じもの)。スズキ・キャラを、スズキの目線でみると、エンジンが自社製、ボディが他社OEMといえるクルマでした。
AZ-1と外観上の違いはエンブレムと車名ロゴを除くと、ごくわずか。キャラにはフロント・フォグランプが標準装備されていたことと、マフラーカバーの意匠が異なる(AZ-1はAUTOZAMの抜き文字になっているのに対してキャラはスリットタイプとなる)くらい。
フォグランプが装備されていたことで価格的にはAZ-1より高かったこともあり、ABCカルテットでは圧倒的に少ない500台少々しか販売されなかったキャラ。当時から希少車だったのです。
(山本晋也)