懸念されたのは、Aピラー(付け根)が先代よりも約35mm後方に配置されたこと、フロントノーズが「100mm長く見える」ようにデザインされた(実質的には90mm程度延長)された点。
バンやボンネットバンの例を挙げるまでもなく、一般的にはボンネットが短い方が前方の見切りがよくなります。Aピラーの位置は、角度やウインドウの形状・角度などにより異なりますが、斜め前方の視界がどうなっているか気になります。
新型CX-5はシートリフターを上げていっても、ほかの都市型SUVと同様にボンネットの先までは見きれませんが、斜め前方視界の死角が大きくて気になることはありませんでした。
パワートレーンを問わず、走り出しから印象的なのは、街中でのストップ&ゴーが先代よりもしやすくなったこと。アクセルを踏んだだけ素直(ナチュラル)に加速し、ブレーキを踏んだだけ止まってくれます。こちらは、看板モデルの2.2Lディーゼルだけでなく、2.0L、2.5Lのガソリンも同様の印象を受けます。
何を当たり前のことを、といわれそうですが、国産、輸入車を問わずこの点を完璧にこなしてくれるクルマは意外に少なく、アクセルを少し踏み込むと過敏に反応したり、素早い(力強い)加速が欲しいのにひと呼吸「間」があったりと、何かしら引っかかる課題を抱えているケースが多々あります。
さらに、とくにディーゼルエンジン車は度重なる改良で、騒音の減少や先述したようにアクセルを踏んだときの応答性が上がっていますから、高速域にステージを移しても乗りやすさ、扱いやすさは不変なのも美点。
また、FFと4WDでは感触は異なりますが、ハンドリングも基本的には非常に素直な特性で、ステアリングを切っていくと穏やかに方向を変えていきます。
それでいて大舵角を与えれば欲しい分だけノーズがインに向き、リヤも安定して追従してくれますから安心感の高さを覚えるはず。それでいながら操舵に対する反応も良好で、コーナーが続く首都高速でも安定感がありながらも軽快感のある走りを披露してくれます。
足まわりは若干硬めですが、低速域の微小な揺れは先代よりも着実に抑えられています。高速域で大きな入力があってもシートの減衰も含めたトータル性能でフラットライドを獲得している印象です。
クセがなくなっても決して薄味ではなく、たとえば乗り心地でいえばトヨタ・ハリアーを明らかに凌ぎ、ディーゼルのトルク感や反応のよさ、静粛性の高さはBMW X3など価格が倍以上する輸入ディーゼルSUVと遜色のないレベルにまで仕上げられていて、「スカイアクティブ」第二世代といえる新型CX-5の実力が運転のしやすさという点からもうかがい知れます。
これでポルシェ・マカンやジャガーF-PACE並の走りの楽しさがあれば……と思うこともありますが、乗員に優しく、誰もが運転しやすいという狙いはかなり達成できているのではないでしょうか。
(文/塚田勝弘 写真/中里慎一郎)