ワイヤレス給電は、フォーミュラEのセーフティカー(BMW i8)としてすでに導入されているほか、市販車でも実現に向けて多くの自動車メーカーと協力関係を構築。
従来のEVの充電は、クルマを停車させて充電器(壁)のプラグをEVにつなぎ充電しますが、ワイヤレス給電は道路に設置(埋め込まれた)されたシステムの上に車両を停め、コードレス(ワイヤレス)で充電できるもの。置くだけでスマホが充電できる「Qi/チー」のようなシステムに似ていますね。
クアルコムの基調講演で印象的だったのは「クルマを壁につなげるという違和感」というフレーズでした。クルマは本来、自由に移動できるまさにモビリティ(移動体)であり、「長時間壁につながれる」のはナンセンスという考え方。
クアルコムのワイヤレス給電は、道路(インフラ)にコイルが入った「Circular Magnetic」を埋め込み、車両側に「Vehicle Pad」を搭載して給電するもの。「Vehicle Pad」には、3.7kW、7.4kW、11kWを用意。BMW i8には7.4kWのVehicle Padが搭載されています。
ワイヤレス給電時には、異物(生物や発火のおそれなどがある金属物)を検知すると給電を自動的にストップし、安全が確認されると自動的に再開されるといった安全性の確保もされています。発火のおそれがある金属と、発火のおそれがないものを識別することも可能。
現在のワイヤレス給電は停止状態が前提ですが、将来的にはコイルが埋め込まれた給電システムを道路に埋め込み、移動しながら(低速域と高速域の両方を想定)充電できることが目標として掲げられています。
走行しながらワイヤレス給電をするにはインフラ整備が欠かせませんが、すでにフランスで約100mのコースを作り、80km/hでのワイヤレス給電の実証検証を推進しているそう。
ワイヤレス給電に使う周波数の標準化も進み(SAE規格で85kWh帯)、現実味が増してきた背景には、自動運転技術の進化もあります。完全自動運転が実現しても充電時には、乗員がクルマから降りてコード(プラグ)をつなぐというナンセンスを避けるべく、ワイヤレス給電の今後の進捗に注目が集まりそうです。
(文/写真 塚田勝弘)