一定の実用性を備え、先述したようにクーペとオープンの魅力を併せ持つロードスターRFは350万円級という価格設定ですが、トヨタ86やスバルBRZという国産スポーツカーと比べても個人的には魅力的に映ります。
ソフトトップのロードスターに憧れながらも耐候性、防犯性などの面で躊躇していた人でも心理的なハードルも下がります。マツダによると、実際にソフトトップのオープンカーは気になるけれど、購入には至らない層も少なからずいるそう。
先代のNCロードスターは、RHT(リトラクタブルハードトップ)が半数を占めていたそうですから、現行NDにRFという、先代よりもさらに独立させたモデルを追加したのは必然ですし、ソフトトップのロードスターとは違ったユーザーを得るのは当然でしょう。
そうはいっても肝心なのは「楽しい!!」かどうか。私が試乗したロードスターRFは生産前のプロトタイプで、「マシーングレープレミアムメタリック」を纏ったVS(6MT)グレード。
あいにくの土砂降りの中、屋根を閉じたままスタートし、首都高速やお台場などを走っているとその静かさは当然ながらソフトトップよりも一段と高く、上質さを感じさせるほど。屋根を叩く雨音が「安っぽく聞こえないように」配慮されたというルーフは頼もしく感じさせます。
静粛性やボディの剛性感などでは完全クローズドのクーペには譲りますが、「ロードスターそのもの」という一体感のある走りは健在。走りを犠牲にせず快適性をきちんと担保している新型ロードスターRFは、歴代ロードスターで最も大人といえる仕上がりになっています。
試乗時間の最後に5分ほど雨が上がったため、オープンエアを楽しむことができました。信号待ちで屋根を開け放つと周囲からの視線を感じましたが、この儀式もオーナーに与えられた喜びでしょう。
個人的に2016年の「ファン・トゥ・ドライブ賞」を決めさせていただくと、ロードスターRF、ルノー・トゥインゴの2台がキャラは違いますが、甲乙つけがたく感じます。
(文/写真 塚田勝弘)