複雑なレーシングカーを制御するため、前面にはじつに24ものボタン/スイッチ、裏面には6つのパドルが用意されており、これらを操作する必要があります。
なお、2016年シーズンでは操作性をさらに向上させるために、ドライバーとともにステアリングホイールのボタン/スイッチの配置が見直されています。
「ル・マン」における最高速度は340km/hに達しますが、こうした速度域で操作するいくつかの制御機能は、ステアリングホイールに設置スペースがないためダッシュボードに移設。
中央に配置されている大型ディスプレイは、速度、現在のギヤ、エンジンマネージメント、リチウムイオンバッテリー残量(前輪を駆動するためにどのくらいの電気エネルギーを使用できるか)などの多くの情報が表示されます。左上のコントロールボタン(DISP)は、表示された情報を選択するためのものです。
また、ステアリングホイールは円形ではなく長方形。これは、舵角が小さくすむためかなと思われますが、ドライバーチェンジの際にスペースが必要なため。とくに、マーク・ウェバーやブレンドン・ハートレーのような長身のドライバーの場合、この形でないと長い足を迅速に収めることができないそう。
ステアリングホイールはカーボン製で、グリップハンドルは滑り止めラバーで覆われています。パワーステアリングシステムによって、比較的狭いグリップでも 容易に操作することが可能で、開口部を通してステアリング裏側の6つのパドルを指で操作。
また、中央のパドルはシフトチェンジ用で、右を引くと シフトアップ、左を引くとシフトダウン。最下部のパドルはクラッチ操作用です。最上部はブースト操作用で、このパドルかステアリングの前述ブーストボタンの好きな方を使うことができるそうです。
最もよく使われるボタンは、親指が届く上部外側に沿って配置されています。
右上のブルーボタンは常に使用し、高速走行時のマシンがほかのクラスのマシンを追い抜く際にヘッドライトを点滅させるパッシングボタン。1回押すとヘッドライトが3回点滅しますが、日中にはヘッドライトの合図に気付くことが難しくなるので、ドライバーは親指を常にここに置いているそうです。
左上のレッドボタンもバッテリーから電力を供給してブーストをかけるために頻繁に使用。ブーストを使うことにより追い抜きが可能になりますが、当然ながら1周あたりに使用できるエネルギー量が規定されていて、周回の途中でエネルギーを消費すると、終盤で使えなくなることに。
ディスプレイ左右下部にあるロータリースイッチ(TC/CONとTC R)は、トラクションコントロールのプリセット用。エンジンとハイブリッドの各設定を調節するため、上部2段のライトイエロー(TF-とTF+)とブルー(MI-とMI+)のボタンを使用。その下には、フロントとリヤ間のブレーキバランスを分配するピンクの+と-ボタン(BR)が配置されています。
ほかにも数多くのボタン類が配されていますが、オンボード映像を見る際は、足元はもちろん、指先も非常に忙しい「仕事」をしているのをチェックするとさらに楽しめそうです。
(塚田勝弘)