記者会見も行われたように、5月11日に三菱自動車から国土交通省に燃費試験における不正行為について報告書が追加されました。
まず、上記の軽自動車4車種の調査について、下記の4点が報告されています。
(1)燃費を良く見せるための走行抵抗の不正な操作は、14型のeKワゴン、デイズ(2013年2月申請)の燃費訴求車の開発において始まった。他の類別(標準車、ターボ付車、4WD車)やeKスペース、デイズルークス、各年式変更車では、走行抵抗は同燃費訴求車のデータから机上計算された。
1点目で驚かされるのは、ほかのグレードや仕様、年式変更、つまりイヤーモデルの走行抵抗のデータは、燃費をウリにするモデルから机上計算されたという点。元となる走行抵抗のデータに不正があった上に、机上計算というのですから根の深さを感じさせます。
(2)同燃費訴求車の開発において、燃費目標は26.4km/Lから29.2km/Lまで計5回引き上げられた。新型競合車の燃費を強く意識したもので、現実的には達成が困難でありながら、根拠に乏しい安易な見通しに基づく開発が進められた。
2点目に関しては、スズキとダイハツが燃費競争でしのぎを削る中、三菱の焦りが透けて見えます。
(3)担当者らは、燃費が「商品性の一番の訴求ポイント」と認識し、開発関連部門の管理職・役員からの燃費向上の要請を必達目標として感じていた。
燃費向上には、パワートレーンの改良、軽量化、ときにタイヤメーカーまで巻き込んだ走行抵抗の低減など、全方位に渡っての努力と積み重ねが不可欠ですが、どの程度、上役が困難な仕事であることを理解していたのか気になるところです。
(4)開発関連部門の管理職(複数)は、業務委託先とのコミュニケーションを十分に行っていなかった上、高い燃費目標の困難さを理解していたにも係わらず、実務状況の確認をしなかった。
上でも述べましたが、燃費目標の困難さを理解していたのに実情を把握していなかったのは職務放棄といわれても仕方ないかもしれません。
(5)再発防止策については、各問題点をふまえ抜本的な改革を検討している。
水島工場で働く方やサプライヤーなどにも丁寧な説明が必要なのはもちろん、最も大切なユーザーの理解が再度得られるでしょうか。
なお、今後の対応については、「その他の現在販売している9車種及び、すでに販売を終了した車種については、ヒアリングの結果、正しく走行抵抗を算出していなかったり、RVRなど机上計算により算出したりしたものがあることが疑われるため、測定データによる裏づけや経緯などを調査中で、別途ご報告する」としています。
さらに、問題となっている「高速惰行法使用の理由・経緯を含む同件の徹底的な調査のため、外部有識者のみによる特別調査委員会を4月25日に設置。同委の報告と提言を受け次第、弊社としての適切な対応を立案し、別途ご報告する」としています。
軽4車種以外にも、RVRが机上計算により走行抵抗データが出されている可能性も示唆されていますが、全容が明らかになるにはまだ時間がかかるようです。
(塚田勝弘)