このコンセプトを具現化するため、
「木は、手を掛けいたわることで色や風合いが変化し、愛情を注いだ分だけ家族へ応えてくれる。これを積み重ね幾世代も受け継いでいくことで、その家族だけのクルマへと変化する。その変化は家族との絆そのものであり、あらゆる思い出を封じ込めたものでもある」
と開発責任者である辻 賢治氏達の思いが木に込められています。
しかし、単に木を切り貼りし、積み木のように組み立てた1/1スケールの玩具ではなく、トヨタがコンセプトカーとして作ったわけですから、こだわりが詰まっています。
その心は「走る・曲がる・止まる」といった性能を装備し、構成部品でもある木材も適材適所の樹種の選択。
木目の鮮やかさや趣き、材質の柔らかさから、外板は「杉」が採用されているほか、フレームは高い剛性を保つ「樺(かば)」、フロアは強度が高く耐久性に優れた「欅(けやき)」、シートには木肌がなめらかな「栓(せん)」が使用されています。
さらに木目の美しさまで表現されています。
「杉」の外板は、丸太の中心に向かって切断した柾目(まさめ)、丸太の中心から適度にずらして切断した板目 (いため)の2パターンを製作。
柾目はほぼ平行に、木目が均等にはっきりと並ぶフォーマルな印象を演出する一方で、板目は木目が柔らかで、1本の木でも同じ木目はなく、趣きのあるフレンドリーな印象を狙っているそう。
また、木の接合には、釘やネジを使用しない日本古来の伝統技法である「送り蟻」「くさび」などが採用されています。
外板の着脱は、釘などを使わずにできる「送り蟻」を活用。まるで宮大工による伝統的な建築物のようですが、接合部の強度を高めるだけでなく、締結部がすり減ったとしても「蟻ほぞ」、「ほぞ穴」を部分的に取り換えることが可能で、本体を加工することなく使い続けることができます。
ほかにも、フレームの接合部には部品と部品を貫通させた「通しほぞ」に「割りくさび」を用いて締結。このように手間を掛けて木と木だけで組付ける「匠の技」も魅力。
取り替え可能な外板はダイハツ・コペンのようですが、86枚のパネルで構成されたボディは、どうしても修理しなければならなくなった時には全体を交換するのではなく、1枚だけを交換することができるなど、今までのコンセプトカーになかったこだわりが満載されています。
(塚田勝弘)