ただし、アルト・ターボRSに標準装備の運転席シートリフターは、アルト・ワークスには未設定で、ワークスがどういった基準でシート位置が決められたか分かりませんが(試乗する前と試乗時は)、後日試乗する機会があった標準車のアルトと比べても着座感は明らかに高めになっています。
また、広報部にうかがうとワークスのレカロシートは、シートの形状やトルソ角などが「背筋を伸ばして座らせる」設計になっていることも着座位置やアイポイントの高さ「感」につながっているのでは? とのこと。
視界の高さは「スポーツモデルなのに高いとはけしからん!」という方もいれば、小柄な人にとっては前がよく見えていい、小柄でなくてもアイポイントは高めの方がいいなど、好みが分かれそう。
私も「低く座って足を投げ出すような姿勢」になるのがスポーツモデルのお約束と思っていたため、違和感を覚えながら一般道や山道、高速道路まで時間の許す限り走ってみました。
専用設計のレカロシート自体は「ホールド性の高さとロングドライブ時の快適性を兼ね備えた」と解説されていますが、個人的にはレカロの割にホールド性はそこそこで、おそらく後者も重要視しているのかな、という印象。
さらに、座面前端部のクッションの硬さを最適化(硬すぎない?)することで、ペダル操作性も向上させているとのこと。
そのペダルは、クラッチは軽くもなく重くもないというところ。プレートスプリングの特性を見直すことにより、トルク伝達がリニアに立ち上がるクラッチ荷重特性とすることで、スムーズで力強い走りを実現しているそうです。また、クラッチディスクの荷重特性を最適化することでミートポイントも分かりやすくなっていて、クラッチ操作そのものも楽しめるように設計されています。
5MTは1から4速をクロスレシオ化し、トルクバンドを持続させるつながりの良いギヤ比に、ショートストロークシフト化とレカロシートに合わせたシフトノブ位置の最適化が図られているそう。シフトフィールは短いストロークで決まりやすく、ホンダS660とは異なる剛性感も味わえる印象です。
こう聞くと、レカロシートの位置決めが高く感じるのは、MTのシフトノブとの位置関係もあってのこととなりますが、背の高い人が同モデルに乗るとヘッドクリアランスの心配も出てきそうです。
(文/写真 塚田勝弘)