──では具体的なカタチの話を。基本モチーフは同じでも、ボクシーなアルトに対し全体を曲面でまとめました
「たとえば、宇宙服のヘルメットのような大きな球体を、横からスパッと切ったイメージです。これによって、ミッドセンチュリー的な未来感や強い塊感が期待できる。軽よりもサイズに余裕があるAセグだからできた造形ですね」
──セルボから採った80年代風の「閉じた」フロントグリルは、デザイン的に不自由な表現と言われてきましたが?
「たしかに、異型ランプの登場は造形の自由を手に入れましたが、それもやり尽くした感がある。一方で、フォードのマスタングなど一部ではグリルの原点回帰が見られます。それに同じシールドビームでも、いまはLEDなどパーツの技術が進化してますから、グリル内の表現の幅もずいぶん広がっているんです」
──東京モーターショーに出展の特別仕様ではホイールアーチモールが付いていましたが、市販版はありません
「デザイナーとしては四駆らしく見せるために是非付けたいところですが、日本ではこの部分にエアロパーツを付けたいという要望が多いんです。ただ、モールがなくても貧弱に見えないよう、ホイールアーチは強い折り返しのプレスを使い、また単純な円ではなく少しだけ角を持たせた安定感のある形状にしています」