東邦テナックス、省エネで生産性の高い炭素繊維製造プロセスを開発

帝人グループの東邦テナックスは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)の「革新的新構造材料等研究開発」のプロジェクトで「マイクロ波による炭素化技術」と「プラズマによる表面処理技術」の開発に成功した、と発表しました。

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今回、東邦テナックスが開発した第1の技術「マイクロ波による炭素化技術」は次のようなものです。この技術の要点はマイクロ波エネルギーによる炭素化、つまり電子レンジと同様の加熱方法で、工業製品とほぼ同等の性能の炭素繊維を製造することに成功したものです。

新開発の方法では、炭素化過程にある繊維状物質の状態に合った好適なマイクロ波エネルギーの照射方法を探すことによって今回の新しい炭素化技術を見つけ出しました。マイクロ波エネルギーを繊維状物質の連続的炭素化に利用することで、炭素化炉を高温に保つ必要がなくなり、炭素化時間も短縮されるため、小さな設備でエネルギー消費が少ない炭素化プロセスが実現できます。

この方法で製造された炭素繊維は、弾性率240GPa以上、破断伸度1.5%以上をマイクロ波加熱による製造方法で、世界で初めて得ることに成功しました。

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もう一つの新技術「プラズマによる表面処理技術」は、ドライプロセスかつ数秒間という極短時間で炭素繊維の表面性状を制御することができ、これにより、従来の表面処理技術と比べて、プロセスを大幅に簡略化することができ、全工程として約50%のエネルギーを削減することができます。

炭素繊維は、軽量・高強度で航空機のみならず自動車への応用が期待されていますが、その一方で炭素繊維は原料を炭化する工程で膨大なエネルギーを要するという特性があり、今後、自動車に本格的導入するには、炭素繊維の製造方法を改善して、製造時における消費エネルギーと二酸化炭素排出量を大幅に低減することが望まれています。

こうした中で、NEDOは平成26年度よりテーマの1つとして「革新炭素繊維基盤技術開発」に取り組んできました。東邦テナックスは、このプロジェクトに参画し、今回の新技術開発に成功したことになります。

今後、東邦テナックスは、炭素繊維複合材料の量産化時代に向けて、この技術を量産プロセスへ適用することを目指しており、また、帝人グループ全体で炭素繊維に関して原料から複合材料に至る広範囲の技術開発を推進する模様です。

このように炭素繊維の技術開発が進展すると、市販の自動車にも炭素繊維が素材として利用される日がそう遠くない未来にやってくることが期待されます。

(山内 博・画像出典:帝人)