『もっとも魅力あるコンパニオン』がいたところとは?【F2P Vol.04】

2009年のショーで、韓国最大手ヒュンダイの主展示場の横にはガラス張りの部屋が設けられました。正面には「ヒュンダイMY BABY」のサイン、その下に『願望がデザイナーを造る』と記してあります。見えるのが大きな気球のようなものと、未来的縮尺モデル群です。これが、2013年まで3回開催された「ヒュンダイMY BABY」展第1回でした。天井をくり抜いた空間に浮いているのは「デンドロス・ノーティックス」、樹上航行機で、資源の少なくなった地球の秘境ジャングルを上空から探索するのです。

MY BABY展を解説してくれたのはヒュンダイ乗用車デザインのオー役員(当時)。韓国大学卒、アメリカの有名デザイン校で学び、ヒュンダイのアメリカ・デザインセンターを創設、ヨーロッパ・センターを経て現職につきました。就任後、先進メーカー追従から脱し、自らのデザイン創造のためには、デザイナーに日常生産車のデザイン限界を破らせることであると考え、3年前にスタートした計画でした。

韓国、アメリカ、ヨーロッパ、中国、インド、日本センターのデザイナーたちにクルマを超えた想像を発揮させるコンペです。まず、アイデアとスケッチを提出、審査で20数点を選び、縮尺モデル製作をさせました。当時で1コ約4万ドルかかったそうです。それが “MY BABY”です。会場では、世界的有名なデザイナー、パトリック・ルケモン・ルノー・デザイン役員が熱心に見ていました。

ルノーのパトリック・ルケモン役員(右端)が来場。
ルノーのパトリック・ルケモン役員(右端)が来場。

ソウル以後、一部がフランクフルトなどで展示されました。

2009第1回5テーマは、エコ進化、エコ情感、未来デザイン、エコ移動、エコ速度でした。いくつか紹介しましょう。

○ エイプスター:直訳すると“猿クルマ”、人が乗り、四肢駆動で自由自在に動きまわります。

エイプスター。猿クルマとはよくぞ名付けたもの。
エイプスター。猿クルマとはよくぞ名付けたもの。

 

○ 車線変えクルマ: 可変トレッドを持ち、車線のある道路ではバイクの細身、オープンスペースではワイドドレッドにして安定とコーナリングを楽しみます。

車線変えクルマ。バイクと乗用車の2態クルマ。
車線変えクルマ。バイクと乗用車の2態クルマ。

 

○ リノ・エアレーサー: 有名なネバダ州レノのエアレース競技機で、未来動力を用いたプロペラ機です。

リノ・エアレーサー。
リノ・エアレーサー。

 

○ SBSS: ラッシュアワーには巨大な駐車場化するカリフォルニアのフリーウエイを有効に使う1輪走行スーパーバイク。デザイナーは、トヨタでスープラ、クライスラーで2代目ダッジ・バイパー、クロノス・コンセプトなどをデザインしたアメリカ・センターの鹿戸治さんで、現在は日産厚木です。

 自律バランス単座車SBSS鹿戸治作品。
自律バランス単座車SBSS鹿戸治作品。

 

○ バランス: 日本センターの提案、一人乗りで電動車椅子使用者にアスリートの運動能力を与える乗り物。

バランス。一人乗りアスリート能力移動機。階段を楽々上下する。
バランス。一人乗りアスリート能力移動機。階段を楽々上下する。

MY BABYは、2009、11、13年ソウル・ショーで、それぞれ趣向を変え開催されました。

2009年はヒュンダイにとって飛躍の年となります。アメリカとヨーロッパにおける販売を大きく伸ばしたYFソナタ・セダン、iX35 ツーソン CUVが登場しました。2台は先鋭スタイリング、性能と競争力ある価格で欧米ライバルを驚嘆させました。ところが、オー役員、2014年に突然“辞職”します。私が知る他の3人の卓越した韓、米の経営、技術、販売幹部がやはり突然辞職しています。韓国ジャーナリストの友人が「理由は神とMKのみぞ知る」といったのは含蓄があります。MKとはチョン・モング会長の頭文字です。(ただ一概に専制とばかりいえないのは、会長長男で後継者と目されているチョン・ウィソン現副会長も傘下キア社長期、アメリカ業績不振で代表権を自主返上しました)

ここでは、MY BABYを楽しんでください。

(山口京一)