今回借りたのはラインナップ中で最も刺激的な「XE 3.0S(769万円)」。
スポーツカーの「Fタイプ」にも搭載される3.0L V型6気筒スーパーチャージャー(340ps/450Nm)を収め、8速ATと組み合わされます。
2000rpmほどで変速するので、室内への音の侵入は少なく、フツーに流す分には室内は静か。力感はもちろん十分で、ドシッとした重厚感もある乗り心地からは「XJ」や「XF」で熟成を極めた味が「XE」にもしっかりとあることが伝わってきます。
そんなサラブレッドが見せる新しい味がコーナリングです。
アルミニウムを75%以上使用したボディは、1710kgと数値上では目立った軽さは見受けられませんが、走り出すと腰から上が明らかに軽いことが分かります。重量バランスを前後50:50としたことも効いていて、4輪が均等に路面を捉えている感覚も強い。フラットな姿勢のままステアリングを切った方向に素直に向きを変えるドライビングフィールからすると、ライバルは「BMW」なのでしょう。
ただ、工業製品的なカッチリとした味付けの「BMW」に対して「ジャガー・XE」は生物的。とくに走行中のクルマの動きの変化についての情報は「XE」の方が豊かで、コーナー外側前輪に掛かる荷重や加速時の後輪への力の増し具合などが鮮明にドライバーに伝わってきて、まるで自分の足で大地を蹴っているような錯覚を得ます。手元のパドルシフトで低いギヤを選んだ時に轟く咆哮も良いアクセントに。
若々しいデザインと乗り味をもつ「XE」に乗っていると、これまで縁遠いと思っていたジャガーが、逆に最も若者向けではないのかと思わせます。
実際、「ジャガー」はブランドイメージの変革は顕著で、プロテニスプレイヤーの錦織 圭選手をアンバサダーに起用するなど、若年層への積極的なPRが目立ちます。
「XE」の導入でラインナップを強化して体制を整えたわけですが、やはりプレミアムブランドのディーラーには近寄りがたい雰囲気があり、試乗はもちろんクルマを見ることさえ覚悟が必要……。
そうなると、例えばメルセデス・ベンツ コネクションのような気軽にブランドに触れられる場所はありがたいですね。
いかにしてブランドの味を知ってもらうか。これまでとは逆に、ガツガツと積極的なアプローチを掛けるブランドが次世代のプレミアムの覇権を握るのではないでしょうか? 「ジャガー」の次なる肉食系の1手が気になります。
とはいえ、まずはこの美女が似合うように自分を磨かねば……
(今 総一郎)