年改したスバルWRX S4を試乗。価格334.8万円のスポーツセダンは乗り心地を改善

具体的には、オイルシールやガイドブッシュなどを最適化することによるフリクションを利用して微小ストローク時の減衰力を確実に発生させるようにしているといいます。

さらに、WRX S4全車においてフロントウインドウへの遮音膜追加、ボディ吸音材の追加などにより振動や騒音も低減しています。

WRX S4のメーカー希望小売価格は334万8000円~、その価格帯にふさわしいプレミアムサルーンを目指しているということでしょうか。

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たしかにアイサイトver.3による追従クルーズコントロールを使って高速道路を走っているときには、路面からの振動も少なくなり快適そのものと感じますが、WRX S4が目指しているのは快適性だけではありません。

そもそもWRX S4はドライバーの期待値を満たすように反応する『動的質感』を強く感じさせるキャラクターを持つモデル。乗り心地を向上させるために、『動的質感』のポイントとなる過渡領域での応答性をスポイルしてしまっては本末転倒です。

また、乗り心地最優先マイルドなサスペンションでは大きな入力を収束するのに難があると感じるように、快適性能と運動性能は相反する部分もありますが、WRX S4の新しい標準サスペンションでは、うねった路面でも姿勢に不安定さは感じません。あくまでもプライオリティは、スバルの目指す『動的質感』を高めることにあるのです。 

しかも、300馬力というパワフルな2.0リッター直噴ターボエンジンを積んでいますから、タイヤの性能を落とすこともできません。そのため、タイヤ自体は従来と同じくダンロップSP SPORT MAXX 050を履いています。当然、パフォーマンス寄りのタイヤで、快適性重視のタイヤと比べるとパターン由来と思われるノイズも少なくないですし、乗り心地を最優先しているという印象もありません。

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ですから、乗り心地が向上したといっても、あくまでもスバルの目指す走りを優先した上での話であって、同価格帯の快適重視系サルーンがターゲットではないわけです。  

WRXと同系統のプラットフォームを持つ、インプレッサ スポーツ ハイブリッドやレヴォーグ 1.6GTの乗り心地から想像するに、それらが履いている215/50R17サイズのタイヤをWRXに与えれば、もっと快適性を上げられそうな印象もありますし、さらにいうとタイヤ自体を乗り心地重視の銘柄とすれば改善することはできるかもしれません。

しかし、WRX S4の目指す走りを実現するにはタイヤのパフォーマンスを変える(落とす)という選択は難しいでしょうし、そうしたときに失うものの大きさを考えると、ダンパーによる乗り心地の向上という改良は、まさに正常進化を遂げたといえそうです。 

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(撮影・文 山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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