トヨタが恩賜発明賞を受賞したFCVの「逆転の発想」とは?

低温始動走行性能を確保するためには 「低温下の始動 ・走行時」と「走行後、氷点下で放置時」などのいずれの場合でも、 FCスタックやシステム部品の凍結による運転不能の状態が生じないように設計 ・制御する必要があります。

FCVは水素をFCスタック内で酸素と化学反応させて電気と水を発生しますが、その水が氷点下−30度の低温下で凍結して発電が継続できなくなる問題を抱えていました。

TOYOTA_FCV(出展 トヨタ自動車)

こうした課題を解決するため、トヨタは氷点下における FCスタック内の凍結現象の可視化と凍結部位の特定 ・解析を行い、セル構造の設計や制御の改良により水の残留防止や排出の促進を図ることに。

TOYOTA_FCV

加えて同社はそれまでのFCスタックの発電効率を上げるための「発熱抑制」を逆手にとり、始動直後にあえて発電効率を下げることで、スタック内で熱を発生させて暖気する手法を発案。

これにより、氷点下の環境で始動する際、FCスタック内の生成水の凍結で発電が阻害されるという大きな課題が解決され、2008年に発表した「FCHV-adv」の開発段階で−30度下でも1分以内で始動 、走行できる性能レベルを確保したという訳です。

FCVが寒冷地においても現状のガソリンエンジン車と同等の利便性を確保できるようになったことで、気候条件の制約を受けることなく需要のある地域への導入が可能となり、FCV「MIRAI」の販売に繋がったのです。

 

今回トヨタが受賞した「恩賜発明賞」は、皇室からの御下賜金を拝受し、最も優れた発明の完成者に贈呈される全国発明表彰の象徴的な賞で、1926年に豊田佐吉が、1938年には豊田喜一郎が、自動織機に関する発明で受賞しています。

 (Avanti Yasunori) 

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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