まだこんな新機構の余地が残っていたとは!
東京オートサロンで新作パーツの取材をするようになって11年目、お手頃な価格帯のサスペンションキットで、こんな新機軸が残されていたとは思いませんでした。
この左の車高調整式サスペンションはテインのFLEX Aというモデルなのですが、ふつうの車高調にはついている部品がないのです。それはバンプラバーです。
ダンパーがめいっぱい縮んだときに、金属部品同士がぶつかると強い衝撃が加わり、乗り心地も悪いし故障の原因にもなるので、ふつうの車高調はバンプラバーという衝撃を吸収する樹脂製の部品をつけるんですね。
最後はそいつがつぶれて衝撃を吸収しながら、金属部品同士の直接の衝突を避けるわけです。
でもコイツにはそれがない。じゃあどうしているのかというと、ダンパーの底にサブバルブが設けられ、バネも入っています。ダンパーがちぢんでいくと、ピストンがバネを押してサブバルブを閉じ、減衰力が高まって、減衰力によって金属部品同士の強い衝突を防いでしまうのです。
つまり、減衰力が途中から急激に強まるんですね。なおバンプラバーは最小限のごく小さいものがついているだけです。
じつはバンプラバーというのは縮んだあとには反発するので、荷物を満載したミニバンなどでは乗り心地がツンツンしたりする原因になっていたんです。
しかし強い減衰力で金属部品の衝突をふせげば、減衰力は反発することがないので、乗り心地がよくなるというわけです。よく考えましたね。これはじつはラリー用サスペンションの技術から持ってきたものだそうです。
つぎはPart2でも出てきたDefiのブースに展示されていたものです。
これはまだ開発中の段階なのですが、なかなかユニークです。Defiのメーターの計測値を採りだして、さらに市販のGPSロガーからのデータを取得して、さらにGoProのようなアクションカメラの映像を取り込んで、記録されたタイムコードで同期させ、それらを統合させた走行データをパソコン上で再生し、走りを再現しようというソフトです。
つまり一般のドライバーでもサーキット走行のデータロガーとして、走りを検討するのに使えるというわけなんですね。このソフトを無料で配布しようと現在開発中とのこと。趣味でタイムアタックをしているドライバーなんかにはたまらないですね。
そして最後は先進の技術。セラミックカーボン製のブレーキローターです。
F1などに使われるカーボンブレーキは熱に強いとか、メリットも多いのですが、専用のパッドを使わなくてはいけないとか、低温では利かないとか、扱いにくさも多いんですね。
これは、そのデメリットを解消するために、単なるカーボンだけのコンポジットによるブレーキローターではなく、強化セラミックス繊維に炭素短繊維、マトリックスに炭化ケイ素を使ったセラミックカーボンという複合材料だそうです。これを使うことで、低温域から制動力を発揮してくれるし、パッドも一般のローター用と兼用できる摩擦材を使ったものが組み合わせられるとか。そして鋳鉄製のローターよりはずっと軽いものができるわけです。まぁ、まだ実用化には遠いそうですが、コストをかければこんなものも作れるんですね。
東京オートサロンでは、こんな風に身近な新機軸を採用したパーツや先進の技術も見ることができるんです。
(まめ蔵)