さて、モリゾウ選手こと豊田章男社長は自らがステアリングを握ってラリーの魅力を伝え、GAZOO Racingはトヨタのラリーマシンだけではなく、メーカーに関わらず世界のラリーカーを集め、宝石のようなそのクルマたちを手の届く距離に展示してくれました。
多くのトヨタディーラーもブース出展し、市販車両を展示することで、競技車両との関連付けがなされていたようにも見えました。
正直に言えば、全日本ラリー選手権の最終戦にトヨタ自動車が力を入れたところで、それが直接的に費用対効果の意味で成果となって現れることはないでしょう。しかしなぜ豊田章男社長は自らの体を張って、そして多大なる手間と経費をかけながら会社を挙げてこのようなイベントを盛り上げるのでしょうか。
それはおそらく「クルマ好きをもっと増やしたい」そして「クルマ好きの皆さんに満足してほしい」という、今のトヨタ自動車の思想の現れだと思うのです。
スポーツカーのオーナーはもちろんのこと、ミニバンや軽自動車のユーザーの中にも、スポーツカーやモータースポーツが好きな人がたくさんいるはずです。また、スポーツカーやモータースポーツのことをあまり知らなくても、こうしたイベントがきっかけで楽しいクルマが大好きになってしまう人がたくさんいるでしょう。
そのような『潜在的クルマ好き』の皆さんにスポーツカーやモータースポーツ活動を体感してもらうこと、それが「トヨタのクルマって面白い!」。いや、「クルマって面白い!」という意識形成につながると、トヨタ自動車は考えているのだと思います。
さらに言えば、それが次世代のクルマオーナーを育てること、つまり日本の自動車文化を継承することになる。
そんな未来を、トヨタ自動車は目指しているのではないでしょうか。
このような長期的な試みは、トヨタ86の誕生をきっかけに急速に広まっているように感じます。自動車メディアとしても、こうした動きが日本の自動車業界の活性化につながっていると、強く実感しています。
トヨタ自動車は、果たしてこれからどのようなワクワクドキドキするイベントを届けてくれるのでしょうか。そして、トヨタ以外の自動車メーカーは、それに負けじとどんな企画を展開してくれるのでしょうか。
日本の自動車カルチャーの今後がたいへん楽しみになってくるのです。
(ハイパーレブ・プロデューサー 渡辺文緒)
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