三菱自動車の渾身作、アウトランダーPHEVは、ガソリン車とハイブリッド車とEVのいいとこ取りをしたようなエコなモデルです。
クルマが自分で発電しながら、充電もできるPHEV、そして、三菱の強みである「SUV」や「4WD」といったキーワードを具現化し、若者やディンクス、ファミリー層まで欲しくなる希有な存在となっています。
アウトランダーPHEVをご紹介する前に、今回お借りした車両をご紹介しましょう。オーナーの方はもちろん、ディーラーで実車を見た方、カタログやホームページでチェックしたことのある人なら「ちょっと違う!?」と思った方もいるかもしれません。
じつは、アクセサリーの「STYLING PACKAGE」装着車で、フロントコーナーエクステンション/サイドシルエクステンション/リヤコーナーエクステンションの3点セットがスポーティなエアロスタイルにドレスアップしているから。
この3点セットはパッケージでの装着のほか、単品での購入も可能ですし、ほかにも内・外装のアクセサリーが多彩に用意されていますので、自分だけのアウトランダーPHEVに仕上げられます。
さて、アウトランダーPHEVですが、日本では同社の登録車の中でも人気車種で、昨年10月からオランダやスウェーデン、ノルウェー、スイスの欧州各地でも販売好調とのこと。
今年4月からはオーストラリア、6月からはイギリスで発売を開始し、さらに、来年以降も北米などグローバルに販売していくそうです。
このように、日本だけでなく海外でも評価されているアウトランダーPHEVですが、「PHEV」って何? という方もいるかもしれません。
「PHEV」は「PLUG-IN HYBRID EV」の略ですが、今回シーン別に実際に走行しましたので、その魅力についてご紹介しましょう。
1:クルマにオマカセで最適な走行モードを選択
アウトランダーPHEVの魅力、まずは「クルマが自分で最適な走行モードを選ぶ」点にあります。
しかし、難しいことは分からない、あるいは面倒!といった人でも、クルマが街中から郊外路や山岳路、高速道路まで「Dレンジ」に入れたままでもクルマが最適な走行モードで走ってくれるからラクチンです。
バッテリーの充電容量が残っていれば、「EV走行モード」が可能で、登り坂や高速道路ではエンジンが主役でモーターがアシストする場合もあり、「パラレル走行モード」と呼んでいます。
どんな走行モードで走っているかは、ディスプレイやメーターでも確認できますし、メーターの左側にあるインジケーターで「チャージ(回生)」中なのか「エコ」走行中なのか、エンジンも活躍している「パワー」走行中なのか確認できます。
また、急な登り坂や市街地走行でもエンジンで発電した電力を使い、モーター走行を行う「シリーズ走行モード」というモーターだけで走るシーンもあります。
実際に走ってみても、Dレンジに入れたままお任せでも、地形や速度などに応じて最適な走りが可能なので、ラクチンです。なにも意識しなくても、エンジンやモーターの効率良いところをウマく使っているんだということがよくわかります。
2:外部電源としても使える「チャージモード」
電気自動車(EV)の充電というと、自宅やマンションでの普通充電、あるいは出先での自動車ディーラーや商業施設などにある急速充電を思い浮かべる人も多いでしょう。アウトランダーPHEVでも、EVと同様に外部から充電することができます。
これらの充電は「4」で取り上げますが、アウトランダーPHEVは、シフトレバー後方にある「CHRG」というスイッチを押すと、走行中でも信号待ちなどの停車中でも積極的にエンジンを発電機としても使うことで、自らバッテリーに充電します。充電は外部からでも車両自身でもできる、というわけです。
さらに、万が一の際など、アウトランダーPHEVを電源車として使用する際にも活躍します。
3:「セーブモード」ならバッテリー残量をキープしながら走行も
同じくシフトレバー後方にある「SAVE」スイッチを押すと、充電はもちろん、「チャージモード」で充電したバッテリーの電力を温存することができます。
バッテリーが残っていれば、早朝からゴルフに出かけたり、深夜に静まりかえった住宅街に帰ったりする際など、そーっと静かにEV走行することが可能なわけです。
走行中も電気はなるべく貯めておきたいという人にも便利なモードで、バッテリー残量をコントロールできるのもエンジンを発電機としても使えるアウトランダーPHEVの魅力のひとつです。
4:走りも楽しくコントロールできる回生レベルセレクター
アウトランダーPHEVも、EVやハイブリッド車同様に、減速時のエネルギーを電力として回生して省エネルギーを実現しています。通常、エンジンブレーキのように感じるこの回生の強さをアウトランダーPHEVは、6段階から中から選べるのが自慢。
ステアリングのパドル式レバーを操作するだけで、回生ブレーキが最も強くなる「B5」から最も弱くなる「B0」まで、上記のように計6段階から選択可能。
「B5」など回生レベルを強くすると、MT車のように強いエンジンブレーキが掛かる感覚になり、上手く使い分ければ下り坂で速度調整しながら回生できます(ただし、回生は駆動用バッテリーの充電が多いと効きが弱くなり、満充電だと効かなくなります)。
操作は上記したように、Dレンジに入れた状態でもパドルシフトを操作すれば「B0」から「B5」まで、CVTやAT車のマニュアル感覚の操作のようにシフトダウンやアップをする感じでできます。
強力なエンジンブレーキのような「B5」レベルは使いこなすのに少し難しく感じましたが、この6段階の回生レベルセレクターを意のままに操作できれば、函館や鎌倉、長崎など坂道の多い地域に住んでいる方や、レジャーでワインディングを走ることが多い人もより走りが楽しめるでしょう。
バッテリーの残量が少ない場合は、積極的に回生量をコントロールしている感覚も得られるのがうれしくなります。
5:急速でも普通でも充電ができる
「PLUG-IN HYBRID EV」を名乗るだけに、充電できるのも大きな強みです。とくに、近所に買い物に出かける程度で、山の上や坂道の多い地域に住んでいなければ、ほとんどEV走行だけでまかなえるはず。
戸建て住宅やマンションなどでは、100Vもしくは200Vの普通充電に対応。200Vで満充電までは約4時間で済んでしまいます。100Vだと約13時間掛かり(100V充電用ケーブルもオプション)ますから、200Vがオススメです。
戸建てもマンションも充電設備の設置が必要ですので、状況に応じて選べない場合もありますが、充電設備のないマンションや屋外の駐車場で充電できなくても、エンジンが付いていますので「電欠」の心配がなく、近くに三菱自動車の販売店など充電スポットがあれば、外出先での急速充電も可能。
なお、急速充電の場合は約30分で80%まで充電できます。もし、時間が15分しかなくて約50%までしか充電できなくても「電欠」の不安がなく走り出せることがPHEVのメリットですね。
充電しなくちゃ! と心配することなく気軽に付き合えるのがPHEVの良さでしょう。
※取材協力:関東三菱自動車販売 高井戸店
6:いざという時やキャンプなどで給電可能!
充電や「チャージモード」でバッテリーに蓄えた電気は、走行時(駆動時)はもちろん、AC100V(1500W)のコンセントに家電などを差し込むことで、アウトランダーPHEVを動く電源として使うことができます。
写真のようにオートキャンプなどで、ホットプレートで焼肉を楽しんだり、炊飯器でご飯を炊いたりなど、「電気のあるクルマ生活」をいつでもどこでも享受できるわけです。流行の車中泊に最適なSUVといえますし、震災時などの非常時でも頼りになる存在になってくれるはずです。
ちなみに、このときの「バーベQ」はホットプレートを1時間くらい使って肉など2人前を焼きましたが、バッテリー残量計はほとんど減ることはありませんでした。
キャンプや車中泊、マリンスポーツなど電気が必要な時に、バッテリー残量に応じて使えますし、ノートパソコンがあれば移動先でも電源を探す手間はなく、どこでも趣味を楽しんだり、仕事も!? できたりします。
(塚田勝弘)
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