市販版をにおわせるオフィシャルフォトの公開からの、
インディのギャラリーへ向けた、走るコンセプトカーのお披露目。
新型NSXは、現在、ホンダの考えるスケジュールどおりに開発は順調に進んでいると思われます。
次に予想されるプロモーションは2014年初頭のデトロイトショー出品、こちらは間違いないところです。
とはいえ市販版が世に出るのは2015年。
情報スピードの速い昨今、いくらスポーツカーファンといえども、2年に渡って興味を持続させるのは容易ではありません。
もう忘れている方もいらっしゃるかもしれませんが、ハリウッドとのタイアップもありました。これからもニュースが途切れないように、小出しにしていく戦法です。
ホンダとしても、特設サイトもしっかりと残しながら、その灯が途絶えないようケアしています。中古車相場も、異例なほど高値を維持しているのも、大きな特徴です。
そんなNSX、ホンダラインナップのスポーツモデルの頂点である事実は揺るぎないものであり、会社を引っ張っていく”御本尊”としての大事なアイコンでもあります。
これほどまでにホンダがNSXに固執するのは、ある事情もあるのです。
それは、現社長の伊東氏が、初代NSXの開発スタッフだったという点。
さらに言うとこの伊東氏、強運の持ち主としても知られています。
さかのぼること2008年、ホンダは苦渋の決断をふたつ行いました。
それは、F1の撤退と、「HSV-010」の開発中断です。
HSV-010は、当時”NSX後継”といわれていた新型FRスポーツ。
ニュルにもひんぱんに姿を現し、GT-Rのラップを超えたとも噂されていたバカっ速のポテンシャル、開発も最終段階を迎えていたといわれるなかでの突然の開発中止。
このふたつの決断で、「スポーツのホンダ」のイメージを強制終了してしまった格好です。
そんな失意のなか、2009年から伊東新体制がスタートしました。
すると、黒歴史として葬られかねなかったHSV-010が、これまで市販車ベースでしか参戦できなかったスーパーGTにおいて、特例として参戦することが可能に。
結果として資源が無駄になるのを防げたうえ、数シーズンにわたって「スポーツのホンダ」をアピールすることに成功したのです。
それを経ての、NSX復活と、F1へのカムバック宣言。
伊東体制の奇跡、ふたつの”リベンジ”を達成したのです。
NSX復活については、投資面のリスクを回避した、という見方もあります。
このご時世、いくらパフォーマンスに優れているといっても「HSV」というブランドをイチから根付かせるのは至難の業であり、NSXと同等の知名度まで持っていくためには、いったい何十億、何百億投下すればいいのか、皆目見当もつきません。
結果として「NSX」が培ってきたブランドのバリューをうまく活かせる環境となりました。
さらに追い風として、Nシリーズの破竹の快進撃によるV字回復も達成。
初代の生産中止からきっかり10年のタイミングで復活するNSXはもちろん、
2013年中にはオデッセイやライフなどの売れ筋もフルチェンジする計画があります。
”持ってる”トップが舵取りをするホンダから目が離せません。
(畑澤清志)