過熱する燃費競争で軽もHV並みの「30km/L超」が主流になって招く弊害とは?

2013年上半期の新車販売でトヨタ「プリウス」や「アクア」の両HVモデルが共に13.2万台と上位を占める一方で、軽自動車ではホンダ「N BOX」が11.8万台、ダイハツ「ムーヴ」が11.4万台、スズキ「ワゴンR」が10.4万台と健闘しています。 

ダイハツ ムーヴ

そんな軽自動車の中でもダイハツ「ムーヴ」とスズキ「ワゴンR」の燃費競争は相変わらず凄まじく、顧客の燃費への関心の高まりを受けて「抜きつ抜かれつ」のデッドヒートを繰り広げています。 

スズキ ワゴンR

火花を散らす「燃費バトル」の歴史を振り返ってみると、

エントリーモデルでは…
 2011年09月 ダイハツがミラ・イースで30.0km/Lを達成
 2011年12月 スズキがアルトエコで30.2km/Lを達成
 2013年03月 スズキがアルトエコの改良で33.0km/Lを達成 

スズキ アルト エコ

主力モデルでは…
2011年11月 ダイハツがムーヴの改良で27.0km/Lを達成
2012年09月 スズキがワゴンRのモデルチェンジで28.8km/Lを達成
2012年12月 ダイハツがムーヴのマイチェンで29.0km/Lを達成 
2013年06月 三菱・日産がekワゴン/DAYZで29.2km/Lを達成。 

まるでオークションのようで、軽自動車の購入を考えている顧客にとっては一体、「いつ買うか?」と、悩んでしまいそうですが、際限無く続くこの燃費バトル、勿論これで終わる筈が有りません。

 三菱 ekワゴン三菱 ekワゴン

日経新聞によると、スズキが月内にも「ワゴンR」の改良で30.0km/Lを、続いて8月にはダイハツがミラ・イースの改良でアルトエコを凌ぐ33.4km/Lを達成予定とか。 

ダイハツ ミラ・イース

軽自動車では価格競争力の観点からHVシステム等の「飛び道具」無しでの勝負が基本となる為、今後の軽の燃費水準が「30km/L」台が当たり前になるとすれば、軽量化にも限度がある事から開発陣の苦労は並大抵のものでは無くなる事が予想されます。 

軽自動車の売れ筋価格帯の実情は120~130万円台に達している事を考えると、メーカー側は今後の燃費向上技術に伴う車両価格アップに果たして何処まで顧客が付いて来てくれるのか、或いはこれ以上の価格上昇が許されないとすれば、逆に何処のコストをどのようにして削るかといった領域に更に深く切り込んで行かざるを得ない筈。 

日産 DAYZ

各社が切磋琢磨してコストを抑えつつ、「前人未踏」の燃費領域に挑戦する事はインドネシア等の新興国での競争力確保の観点で有意義に感じる反面、「販売店からの声」を重視するあまり、動力性能など他の技術要素が疎かになっては本末転倒。 

「燃費」の過当競争が車両性能への弊害を招く前に、「30.0km/L」を超える低燃費車ほど実燃費との乖離が拡大する「JC08モード」そのものの判定基準見直しを併せて推進して行く必要が有りそうです。 

■ダイハツ Webサイト
ミラ イース http://www.daihatsu.co.jp/lineup/mira_e-s/index.htm
ムーヴ   http://www.daihatsu.co.jp/lineup/move/index.htm
ムーヴ カスタム http://www.daihatsu.co.jp/lineup/move_custom/index.htm 

■スズキ Webサイト
アルト エコ  http://www.suzuki.co.jp/car/alto_eco/
ワゴンR   http://www.suzuki.co.jp/car/wagonr/
ワゴンR スティングレー http://www.suzuki.co.jp/car/wagonr_stingray/ 

■三菱 Webサイト
ekワゴン  http://www.mitsubishi-motors.co.jp/ek_wagon/index.html
ekカスタム http://www.mitsubishi-motors.co.jp/ek_custom/index.html 

■日産 Webサイト
DAYZ  http://www2.nissan.co.jp/DAYZ/point_dayz.html
DAYZ ハイウェイスター
    http://www2.nissan.co.jp/DAYZ/point_dayzhighwaystar.html 

〔関連記事〕
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 (Avanti Yasunori

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この記事の著者

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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