ホンダ渾身のハイブリッドカーといえる「アコードハイブリッド」の発売が間近に迫っています。各地の販売店で具体的な話が始まっているという話を耳にした人も多いのではないでしょうか。
その初夏(6月頃)に発売といわれるアコードハイブリッドには、これまでホンダが10年以上に渡って進化・熟成させてきたIMAハイブリッドシステムとはまったく異なるシステムが採用されることは発表されていますし、この新システムを搭載したアコードハイブリッドは北米市場ですでに発売されています。
それが、『スポーツハイブリッドi-MMD(インテリジェント・マルチ・モード・ドライブ)』と呼ばれるものです。
高効率なアトキンソンサイクル2.0リッター4気筒エンジンに、2モーターからなる電気式CVTを組み合わせたハイブリッドシステム。バッテリーだけで走行するEVドライブ/エンジンで発電用モーターを回して走行用モーターでタイヤを駆動するハイブリッドドライブ/エンジンで直接タイヤを駆動するエンジンドライブという3つのモードを持っています。
従来、インサイトやCR-Z、フィットハイブリッドなどが採用しているIMAシステムでは、モーターはエンジンをアシストするのが役割でしたが、i-MMDではモーターが主体で、高速域などでエンジンがカバーするといった役割分担になっているのが大きな違い。
いわゆるハイブリッドシステムの分類でいうと、従来からのIMAがパラレル式であるのに対して、i-MMDはシリーズ式を基本としていますから、従来技術の進化版ではありません。アコードクラスの車格に合わせて、ゼロから新開発された新世代のスポーツハイブリッドというわけです。
バッテリーも従来のニッケル水素電池からリチウムイオン電池へと変わっています。
このバッテリーは、1.3kWhの総電力量を持つもので、出力密度に優れたもの。最高出力124kWという走行用モーターの実力に見合ったものといえますが、モーターの最高出力までバッテリーだけで到達するのは難しく、ピークパワーはエンジンで発電用モーターを回し、バッテリーからも電気を送り込むシリーズ状態といえる「ハイブリッドドライブ」モードのときに発生されるということです。
モーター主体で走るといっても、エンジンも高効率でなければ優れた燃費性能は達成できません。最大熱効率38.5%以上を達成したという、アトキンソンサイクル2.0リッターエンジンには、ホンダエンジンのシンボルともいえるカムプロフィール切り替え式のVTEC機構と可変バルブタイミング機構VTCが吸気側に備わっているものです。
ちなみに、エンジン単体でのスペックは、最高出力:105kW/6200rpm、最大トルク:165Nm/4500rpmとなっていますが、エンジンだけで走行するモードが限定的なこともあり、この数字にはそれほどこだわる必要はなさそう。むしろ、走行用モーターのほうが最高出力(124kW)、最大トルク(307Nm)ともにエンジンを上回っていることが、i-MMDのキャラクターを示しているといえましょう。
また、このエンジンはウォーターポンプを電動化するなどしているため、ベルトレスの設計となっています。そのためクランクプーリーはあくまでウェイトとしてつけられ、そこに溝が切られていないのも特徴です。
なお、電気式CVTと表現されているので、ベルト式CVTのような変速装置が存在しているように思うかもしれませんが、エンジンとタイヤの間には、固定されたギア(変速比は1.000以下)があるだけで、無段・多段変速機は存在していません。ベルト式CVTではプライマリプーリーにエンジンがつながっていて、その出力をベルトを介してセカンダリプーリーに伝えているように、発電用モーターをエンジンで回して、そのエネルギーを電気によって走行用モーターに伝えていること、すなわちエンジン回転とタイヤの回転を変速していることをCVT(無段変速機)と表現しているといえます。
そのためエンジンを駆動系とつなぐためのクラッチは存在していますが、走行用モーターは常にタイヤにつながっているレイアウトとなっているのです。こうして生まれたi-MMDは、世界トップクラスの高効率なエンジンの、効率に優れた領域を積極的に使えるものとなったのです。
JC08モード燃費スペックが、すべてのホンダ車の中でナンバーワンというウワサも、あながち嘘ではないのかもしれません。
(山本晋也)