米国3大メーカーが東京モーターショー2013に出展しない理由とは ?

第43回東京モーターショー(日本自動車工業会主催)が2013年11月22日(金)~12月1日(日)の10日間に渡って今回も東京ビッグサイトで開催されます。

東京モーターショー2013

24年振りに幕張から東京に会場を移した先回2011年のショーでは国内メーカー14社・15ブランド、海外から21社・25ブランドが参加してワールドプレミア53台が披露され、10日間での総来場者数が84万人を超えるなど、大盛況のうちに幕を閉じました。

そうした中でここ数年目立つのが米国勢の出展が無いこと。リーマンショック後の「東京モーターショー2009」で出展を取り止めて以来、不参加が続いており、新聞報道などによると今回も出展を予定していないそうです。 

シボレー クルーズ
シボレー クルーズ

TPP事前交渉で「米国車が日本で売れないのは市場が閉鎖的なため」と強く批判していますが、日本の自動車業界は「販売増に繋がる商品力、アピールが足りない」と反論しています。

確かにこうした日本の消費者にアピール出来る絶好のイベントに参加しないというのでは米自動車業界の主張が「一方的」と判断されても仕方有りません。 

シボレー クルーズ
シボレー クルーズ

米国勢は不参加の理由について、今回も「販売促進に繋がる効果が期待できない」としているようですが、4月21日に中国で開催される上海モーターショーには3社とも参加する見通し。 

一方、「V40」の販売が好調なスウェーデンのボルボは、2007年以来の出展を決めた模様。 

欧州勢は2009年にリーマン・ショックで出展を辞退したものの、2011年からショーに復帰。エンジンのダウンサイジングによる燃費向上や、日本人の感性に訴える魅力的なモデルを続々積極投入しており、その成果は輸入車市場に於けるシェアを見れば一目瞭然です。 

2012年度の輸入車ブランド別登録台数では、VWが5.6万台を販売して23%のシェアを確保、同様にメルセデスベンツが4.2万台(17%)、BMWが4.1万台(17%)、MINIが1.6万台(7%)、Audiが2.4万台(10%)、Volvoが1.4万台(6%)など、上位6位までで欧州勢が80%のシェアを占めています。

2012年度 輸入車ブランド別 登録台数

ちなみに2012年度の輸入車中、売れ筋の車種は以下のとおり。 

・VW  
 ゴルフ(22252台)、ポロ(14442台)、アップ!(4266台)
・メルセデスベンツ
 Cクラス(15479台)、Eクラス(7898台)、Bクラス(4354台)
・BMW
 3シリーズ(11107台)、1シリーズ(10436台)、
   5シリーズ(3874台)、 X1(2814台)、MINI(16212台)
・Volvo 
 60シリーズ(8065台)

欧州勢は日本での販売台数に大きな期待が出来なくても、商品に対して厳しい目を持つ日本市場で受け入れられれば世界で通用するとして、HVやEVに関する高度な技術や品質管理、建付け精度などを日本車から学んで、その成果を日本市場にもフィードバックしています。

年度別 輸入車販売推移

対する米国勢はJEEPの約5,000台を上限に全車種合わせても年間販売台数が1万台程度と、少なく、シェアで見ても4%台に留まっています。

その背景は米国車のラインナップには低燃費車や小型車が少なく、日本市場に合わせた車種展開に乏しい為で、欧州勢と比べて「本気度」の差が顕著に現れています。

JEEP
JEEP

一方、米国市場に目を移すと、ビッグ3(GM、FORD、クライスラー)が2012年度のシェアで44%(約650万台)を占めています。 2013年に入っても3社のシェアは約46%と高く、1~3月だけで既に約170万台を売り上げており、正に日本とは桁違いの市場規模。

2013年度 米国自動車販売ランキング

ビッグ3はリーマンショックを機に経営資源を集中させる為、欧州勢にシェアをすっかり抑えられている日本市場に見切りをつけて、大規模な自国市場や大型車を歓迎してくれる可能性が高い中国市場に活路を見出しているという訳です。

シボレー マリブ
シボレー マリブ

結局のところ日本市場は輸入関税もかけておらず、欧州勢の進出ぶりを見ても判るように決して「閉鎖的」という訳では無く、米国勢は自らの商品性やマーケティング手法に原因を見出すべきで、ひとたび米国車が日本人の感性に響けば必ずや新たな道が自ずと開ける筈。

経営効率優先で、とりあえず販売数が期待できる地域のモーターショーのみに積極参加するという姿勢は同盟国の筈の日本から見て疑問が残るだけでな無く、欧州勢のような「日本市場で商品性を磨く」という心意気が感じられないのは非常に残念な事。

フォード フォーカス
フォード フォーカス

とは言え、「輸入車市場に新潮流 ? 小型車導入に力を入れ始めた米国勢 !」の記事でも触れたように、最近ようやくビッグ3も従来の大型車に代わって、傘下の欧州部門の「ソニック」や「フォーカス」、「イプシロン」などのコンパクトカーを日本へ導入する傾向を見せ始めており、その点では今後の動向が大いに注目されます。

東京モーターショーでコンパクトカーを中心に据えつつ、新型コルベット等のスポーツカーを出展すれば日本でも注目度はかなり高まる筈で、米国勢は今からでも出展に向けて再考した方が賢明かもしれません。 

〔関連記事〕
輸入車市場に新潮流 ? 小型車導入に力を入れ始めた米国勢 !
https://clicccar.com/2013/03/30/216445/ 

■第43回東京モーターショー2013 Webサイト
http://www.tokyo-motorshow.com/ 

 (Avanti Yasunori) 

【写真ギャラリーをご覧になりたい方はこちら】 https://clicccar.com/?p=217720

この記事の著者

Avanti Yasunori 近影

Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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